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ファースト・セッション1
くすくす
ページをめくる音。かすかな笑い声・・・。
『誰?・・・唯?まさか違うよな。だってここは、学校だ・・・』
「がっこお・・・。え?」
「あ、おこしちゃった。ごめんね。先生」
「・・・。2B磯谷・・・さくら」
「いくら、放課後だからって、うたた寝なんてイケナイんだぁ」
「・・・」
「それより、全巻揃ってるなんて、『のだめ』先生好きなの?」
「・・・まあね」
「ふーん」
「ふーんって、さくら。教官室には、かってに入ってきちゃだめだろ・・・」
「お昼寝できなくなっちゃうから?」
「そうじゃなくてさ・・・」
「心配ないです。わたし、誰にも言いませんから」
「だから、そうじゃなくて、試験前とかだったら大変だろ。問題用紙とかここで作るんだから」
「あ、それ、ラッキーですね。あはは」
「あははって。おまえね」
* * * *
俺は、成瀬慎司。私立高校の音楽教師。
両親を国際的な音楽家に持つ磯谷さくらは、この高校始まって以来、初になるであろうT芸大合格候補。いわば希望の星だ。
それはそうと、ボーっとしていた頭が冴えてきた。
眠ってしまうぐらい静かな午後。何かが足りないと思った理由が分かった。
放課後のBGM。そう、さくらのピアノと牧野亮のサックスだ。
「今日は、相方は来ないのか?」
「・・・どうかな」
急にだまり込むさくら。
「先生?男って誘われたら、好きでもない人とでもデートしたりする?」
ああ、なるほど。
「・・・そういうヤツもいるだろうけど。好きじゃなきゃ、会いたいとも思わないし、デートもしない」
さくらには決定的な言葉。やばい。
「そうだよね」
うつむいたままのさくらだった。
「そうがっかりするなよ。今日は先生が一緒に合わせてやるよ」
「・・・実はそれが一番がっかりだったりして」
憎まれ口。十七歳の少女は精一杯無理して笑う。
ページをめくる音。かすかな笑い声・・・。
『誰?・・・唯?まさか違うよな。だってここは、学校だ・・・』
「がっこお・・・。え?」
「あ、おこしちゃった。ごめんね。先生」
「・・・。2B磯谷・・・さくら」
「いくら、放課後だからって、うたた寝なんてイケナイんだぁ」
「・・・」
「それより、全巻揃ってるなんて、『のだめ』先生好きなの?」
「・・・まあね」
「ふーん」
「ふーんって、さくら。教官室には、かってに入ってきちゃだめだろ・・・」
「お昼寝できなくなっちゃうから?」
「そうじゃなくてさ・・・」
「心配ないです。わたし、誰にも言いませんから」
「だから、そうじゃなくて、試験前とかだったら大変だろ。問題用紙とかここで作るんだから」
「あ、それ、ラッキーですね。あはは」
「あははって。おまえね」
* * * *
俺は、成瀬慎司。私立高校の音楽教師。
両親を国際的な音楽家に持つ磯谷さくらは、この高校始まって以来、初になるであろうT芸大合格候補。いわば希望の星だ。
それはそうと、ボーっとしていた頭が冴えてきた。
眠ってしまうぐらい静かな午後。何かが足りないと思った理由が分かった。
放課後のBGM。そう、さくらのピアノと牧野亮のサックスだ。
「今日は、相方は来ないのか?」
「・・・どうかな」
急にだまり込むさくら。
「先生?男って誘われたら、好きでもない人とでもデートしたりする?」
ああ、なるほど。
「・・・そういうヤツもいるだろうけど。好きじゃなきゃ、会いたいとも思わないし、デートもしない」
さくらには決定的な言葉。やばい。
「そうだよね」
うつむいたままのさくらだった。
「そうがっかりするなよ。今日は先生が一緒に合わせてやるよ」
「・・・実はそれが一番がっかりだったりして」
憎まれ口。十七歳の少女は精一杯無理して笑う。
更新日:2013-09-28 16:29:42