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小説

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おもひで

 蛍の季節になると思い出す。3年前病死した姉さんの事を。
「思い出はどんどん美化されて、もっと忘れられなくなるわよ。お姉さんにとって重荷じゃない?」
同級生の幼なじみが言う。姉さんの葬儀で一緒に泣いてくれた彼女だから悪意がないのはわかる。けど。
「僕の勝手な感傷だ。放っておいてくれ」
と、冷たく突き放す。
 蛍の乱舞する土手。最後に姉さんと二人で眺めた景色。
 蛍は死者の魂。そんな他愛ない逸話に、けれど僕は浸る。
 この中に、姉さんの魂があるのなら、と。
「そんなに、私に逢いたい?」
空耳?いや、確かに真後ろから声が。
「姉さん!!」
幻でもいい!姉さんに逢えるなら!
 そして、振り返ったそこには。

 腐乱してボロボロになり、かろうじて人型を保っている姉さんが。
「私も、逢いたかったわぁぁあ」
「あ、ああああっ!!」
僕は逃げ出した!姉さんから。必死で逃げ出した。











「こんな所かしら」
「ごめんなさい。辛い事を」
 私の謝罪に、気軽に彼の姉は手を振った。
「いいの。いつまでも引きずる事じゃないし。それよりこれからお願いね」
「はい」と答えた私に向けた彼女の最後の笑みは、生前のそれと等しく、とても、美しかった。

更新日:2011-08-01 22:56:01