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戦闘輪舞 -バトルロンド-
地下街に天使が舞い降りた。
ふいにやってきた美しいメイドに、そこに住む人たちはおどろいたが、彼女が前に酒とあたりめを投げ込んで消え去ったチャイナの女だと気づいた辰さんが、仲間にそう説明したので、みんな警戒をといて集まってきた。
冷たい夜風に震える人々に惜しみなくアルコールを配り、嫌がることなく輪の中に入って話を聞くメイドさんに、彼らは神性を感じた。
「こないだはありがとよ、お姉ちゃん。今夜もこんなに差し入れ持ってきてくれて」
「ねえちゃん色が白くって彫が深いけどハーフかなんかか?」
「いける口だねぇ、ほらドンドン飲んでっ」
突然はじまった深夜の宴の中、人々は口々にメイドさんに話しかけ、彼女もまたそれに笑顔でこたえた。
口数が少なく、その正体もわからないけれど、事情があってここに住む自分たちにちゃんと接してくれるメイドさんに、みな好意を抱いている様子だった。
冷たい世間の風もその周りを避けてゆくような温かい宴はずっと続くかにみえたが、終わりも突然やってきた。
「おぉ-っ!今夜はメイドさんがいるよォ」
あざけるような声が宴の輪の外でした。
声のした方を見ると、5人の若者が手にバットや木刀といった物騒な物をさげて、こちらを向いてニヤニヤと笑っていた。
先頭に立っている長い金髪の男が、手のひらに特殊警棒をピタピタと叩きつけながらいった。
「かわいいねーメイドさん。俺らといっしょにこの臭いのいじめて遊ばない?」
男たちの発する負の空気におびえて、ホームレスたちは後ずさりしながら固まってゆく。
「街のおそうじ屋さんさ、俺らは。 こうやって! 汚いのを! かたづけてさ!」
シャーッと音をたてて警棒を伸ばすと、男はゆがんだ笑い声をあげながら、ダンボールハウスを一つづつ潰してゆく。
「うわぁぁぁ!」
一人のホームレスが恐怖に耐え切れなくなり逃げ出した。
木刀を持った男がすばやく走り、地上へと続く階段に逃げたその影に斬りかかる。
鈍い音がして、悲鳴が暗い闇から響いてきた。
警棒の先をメイドの顔にむけて、金髪がいう。
「それともなに? あんたも偽善者でこいつら守る方なわけ?」
男がうつむいたメイドの顔をあげようとした時、冷えた声がした。
「・・・・臭いねぇ」
「あァ? そりゃ臭いさ、ここは」
そう答えた男をあざける高い笑い声がメイドの口から飛び出す。
そしてよく光る目で男を見据えて言った。
「いくら香水振りまいて隠しても、消せないくらいバカなガキの匂いがして臭いっていってんのさ」
彼女の押し殺した声に、男たちの笑いが止まる。
メイドはゆっくりと立ち上がった。
ふいにやってきた美しいメイドに、そこに住む人たちはおどろいたが、彼女が前に酒とあたりめを投げ込んで消え去ったチャイナの女だと気づいた辰さんが、仲間にそう説明したので、みんな警戒をといて集まってきた。
冷たい夜風に震える人々に惜しみなくアルコールを配り、嫌がることなく輪の中に入って話を聞くメイドさんに、彼らは神性を感じた。
「こないだはありがとよ、お姉ちゃん。今夜もこんなに差し入れ持ってきてくれて」
「ねえちゃん色が白くって彫が深いけどハーフかなんかか?」
「いける口だねぇ、ほらドンドン飲んでっ」
突然はじまった深夜の宴の中、人々は口々にメイドさんに話しかけ、彼女もまたそれに笑顔でこたえた。
口数が少なく、その正体もわからないけれど、事情があってここに住む自分たちにちゃんと接してくれるメイドさんに、みな好意を抱いている様子だった。
冷たい世間の風もその周りを避けてゆくような温かい宴はずっと続くかにみえたが、終わりも突然やってきた。
「おぉ-っ!今夜はメイドさんがいるよォ」
あざけるような声が宴の輪の外でした。
声のした方を見ると、5人の若者が手にバットや木刀といった物騒な物をさげて、こちらを向いてニヤニヤと笑っていた。
先頭に立っている長い金髪の男が、手のひらに特殊警棒をピタピタと叩きつけながらいった。
「かわいいねーメイドさん。俺らといっしょにこの臭いのいじめて遊ばない?」
男たちの発する負の空気におびえて、ホームレスたちは後ずさりしながら固まってゆく。
「街のおそうじ屋さんさ、俺らは。 こうやって! 汚いのを! かたづけてさ!」
シャーッと音をたてて警棒を伸ばすと、男はゆがんだ笑い声をあげながら、ダンボールハウスを一つづつ潰してゆく。
「うわぁぁぁ!」
一人のホームレスが恐怖に耐え切れなくなり逃げ出した。
木刀を持った男がすばやく走り、地上へと続く階段に逃げたその影に斬りかかる。
鈍い音がして、悲鳴が暗い闇から響いてきた。
警棒の先をメイドの顔にむけて、金髪がいう。
「それともなに? あんたも偽善者でこいつら守る方なわけ?」
男がうつむいたメイドの顔をあげようとした時、冷えた声がした。
「・・・・臭いねぇ」
「あァ? そりゃ臭いさ、ここは」
そう答えた男をあざける高い笑い声がメイドの口から飛び出す。
そしてよく光る目で男を見据えて言った。
「いくら香水振りまいて隠しても、消せないくらいバカなガキの匂いがして臭いっていってんのさ」
彼女の押し殺した声に、男たちの笑いが止まる。
メイドはゆっくりと立ち上がった。
更新日:2011-11-22 23:47:12