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VIOLET FIZZ

 ゆらゆらと静かにゆれる水面に箱が浮いている。
 木枠を組み合わせて作られた箱で、動物が入れられるあれによく似ている。
 ぼくはただそれを何も考えずに眺める。夢を見ているのか実際に見ているのか、なんだか判断がつかない。ぼくも水と同じようにゆれているのかもしれない。
 箱は遠ざかってゆく。ゆっくりと。
 ときどきどこからか明かりがよぎって水面を照らした。その度水は紺だったり紫だったり太陽が当たっているようなオレンジだったりに変化して、まるでその正体をぼくにつかませまいとしているようだった。
 中身はなんだろう、やはり動物なのだろうか。
 普段の3分の1ほどのスピードでものを考える。女だ、と思い当たった。彼女だ、と。
 おそらく人間にしては不自然な白さの肌を持った彼女だ。透き通るような素材の、ノースリーブの白のワンピースを着てあの中にあお向けに寝ている。そう確信した。

 やがてぼくは気づく。箱が遠ざかっているのではなく、本当に小さくなっていることに。

更新日:2009-01-08 20:10:27

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