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第4章 刻まれた傷

「誠に遺憾です!」

球技大会が終わってからは特に大きなイベントもなく、
毎日だらだらと過ごしていた。

そんな中、ミホちゃんが帰りのホームルームで声を荒げる。
勿論、俺らは心当たりが全くないので揃って首を傾げる。

「我がA組の小テストの平均点が、他のクラスと比べて明らかに低いです」

成程、そう来たか。
俺も成績がいい方ではないのでこういう話を聞くと耳が痛い。

「球技大会の成績はいいのにねぇと、B組の高田先生からは皮肉までもらっちゃいました」

「あはは、上手いこと言うなぁ」

「笑いごとじゃないです!」

軽口をたたいた透は、ミホちゃんの余りの迫力に首をすくめる。
高田先生とミホちゃんはお世辞にも仲がいいとは言えない。
その高田先生に言われ、内心面白くないんだろう。

「次の期末テストでA組がもしも平均点が一番低かったら、
全員夏休みに2週間補習を行います」

「ええ、なんで全員なんですか!?」

「連帯責任です! それに取ればいいんです!
以上、キチンと掃除をしておくこと!!」

ミホちゃんはぷりぷりしながら教室を出て行った。

「やれやれ困ったわね」

未来がため息をつく。

「未来は成績いつもトップだろうが」

「だからあんたみたいな馬鹿がいるから心配してるんでしょ」

未来の冷ややかな言葉が突き刺さる。
自分のことは自分が1番分かっている。
せめてもう少しオブラートに包んで欲しかった。
中間テストの成績を湊に見せた時の苦い顔を俺は忘れられない。

『皆で勉強すればきっと成績も上がるよ!』

湊がガッツポーズを作る。そう言う湊の成績も上位の方だった。

「頭のいい人はそんなこと言えるんだよ……」

「ったく、根性ないわねぇ」

俺も勉強する気はある……。
しようと思うけどつい楽器をいじってしまうのだ。

『それじゃあ、また明日!』

湊はバイバイと手を振って教室を出て行った。
もう少しだけ話したかったな。
球技大会の時、湊を抱きしめて以来、どこか湊を意識するようになってしまった。

ダメだダメだ……。
こんなんじゃまた勉強に身が入らない。
そうは思ったものの、その日の夜開いたノートは白紙のままだった。

更新日:2011-06-30 06:34:16

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