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小説

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11時42分: 駅前

挿絵 240*320


 着いたのは、待ち合わせより18分早かった。
 学生時代にイヤというほど徘徊したこの街も、5年を経てあちこちが様変わりしている。早く着いて、昔なじみの店を見て回るつもりだったのが、見慣れない建物につい気を取られているうちに、なんとも微妙な時刻になった。
 まあいいか。とりあえずこの場所で待ち合わせたのは正解、ってことで。久我もおれも、就職と同時に引っ越していたから、わざわざこの駅をメールで指定したとき、久我からは「は?」とわかりやすいリアクションが返ってきた。そのくせ、何だかんだで付き合うところが、いかにもあいつらしいんだよなぁ。
 メール、でふと気づいて懐を探る。近頃のケータイってぺったんこ過ぎじゃないか? お陰でしょっちゅう行方不明になって、誰かに着信頼む羽目になるんだよ・・・・・・などとぼやいているうちに、指先がこつんとそいつに当たる。
 手ごたえの薄いボタンをぺこぺこ打って、これでよし。

 『駅前に、ふら~っと居るから』

 街は青空の色に染まっていて、懐かしい匂いにあふれている。正直、このまま一時間くらい突っ立ったままでも、退屈しないで済みそうだった。

更新日:2011-07-06 12:18:10