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第一章 『アイツ』 1988.1~
和杷とも連絡が取れないまま数日がたった。
一応留守番電話にある程度の内容は入れたが、返答が無いと人間不安である。
恵美も暇という訳ではない。
自分の仕事をしながら自然と時が流れた。
アイツとの慌しい出会いを忘れかけた頃…また電話が鳴る。
「俺ぇ~。あのさ…」
何を話したのか解らない。ただ…胸が高鳴っていたのは覚えている。
「で?聞いてる?」
「ん。あ…うん。聞いてるよ」
「それじゃぁ~な?おやすみ」
「うん。バイバイ」
幾度もこういった感じで電話でのやり取りを繰り返した。
気が向いた時一方的に電話をし、一方的に電話を切る。
いつの間にかそういう勝手な行動に苛つく事がなくなっていた
収録が終わってからずっと電話で会話を続け、朝を迎えた日もあった。
なのに笑って会話している自分に驚きもした。
結局ずっと和杷とも連絡が取れず、独りぼっちの年末を迎えた日アイツは新人賞を当然のように受賞し、日本の伝統番組でも華を沿えた。
今日は電話くれないよね…なんて思う程心待ちにしていた自分がいた。
「馬鹿みたい。そんなの当り前じゃない。向こうはトップアイドルで私はアイツの何でも無いんだから…」
独り言を呟きベッドに身体を投げ入れるが眠れる訳もなく、電話を握ったまま天井を見つめていた。
ため息と同時に深夜のコール
「も、もしもし!」
「早いな~…もしかして待っていた?」
「べ、別に待ってなんかいないもの。たまたま電話が近くにあったから」
どうして素直に『待っていた』と言えないんだろうって自己嫌悪
「そっか。なぁ~…?見ていた?」
「うん。見ていたよ。凄かったね?おめでとう」
「ありがとう」
物凄い歓喜の声が返って来た。
「あの、私っ明日なんだけど…」
「おぅ!明日だからな?ちゃんと来いよ」
本当は断ろうって思った。
和杷と連絡が取れない中、1人で行くのは嫌だったから…
なのにその嬉しそうな声に言葉をなくしてしまった。
「う、うん。解ってる」
それから何を話したか全く覚えていない。
遠くでもう1人の誰かが会話をしているかのように、自分自身は蚊帳の外にでもいる感覚だった。
「それじゃ?待ってるな?」
「うん。それじゃぁね?」
電話を切ってから動揺を隠せなかった。
-私…変だ…何だ…何が起こってるの…?混乱する-
結局何の解決も見出せず朝日は昇る…。
合鍵を持っている和杷が突然あがり込み抱きついてくる。
「ごめん。恵美、一人にさせて」
「うにょ?ななな、何?」
「行くんでしょ?コンサート。行こう…一緒に」
「うん。そう、そうだよ!私言いたい事沢山あるよ!」
「もう、いいってば、移動しながら聞くから」
強引に手を引かれ家を出る。
和杷のマネージャーが運転する車に図々しく乗せてもらい会場へ向かう
その間色々話した。
結局、電話や家を教えたのは和杷!
あまりにも真剣だったから教えたそうだ。
その事については本気で謝るので許してあげる恵美。
「もぅ!いいよ…許してあげる」
「エヘヘありがとう」
「ねぇ?和杷、どうしてアイツは私にそんな執着?したのかな…むしろ嫌っている相手なんてシカトすればいいじゃない?」
「ご、ごめん…そんなに嫌いなの?」
「あぁ…いや、そうじゃなくて…あの時の私がとった態度だよ…」
「じゃぁ今は好き?」
和杷がニコニコするので恵美は和杷を軽く叩く
「どうしてそうなるのよ」
「あはは…う~ん、私はわかんないけど…凄い真剣だったんだよね。切羽詰っているって感じ?」
「どうして?」
「知らないよ。聞いてみた?」
「ん~~聞いて無いかも」
思い返してみれば聞いていない。
どうしてあの日来たのかって理由は、やっぱり理解出来なかったしそれ以来そういう会話にはなった記憶は無かったから。
「だったら聞いてみたらいいじゃん」
和杷にそう言われ、素直に頷いた。
一応留守番電話にある程度の内容は入れたが、返答が無いと人間不安である。
恵美も暇という訳ではない。
自分の仕事をしながら自然と時が流れた。
アイツとの慌しい出会いを忘れかけた頃…また電話が鳴る。
「俺ぇ~。あのさ…」
何を話したのか解らない。ただ…胸が高鳴っていたのは覚えている。
「で?聞いてる?」
「ん。あ…うん。聞いてるよ」
「それじゃぁ~な?おやすみ」
「うん。バイバイ」
幾度もこういった感じで電話でのやり取りを繰り返した。
気が向いた時一方的に電話をし、一方的に電話を切る。
いつの間にかそういう勝手な行動に苛つく事がなくなっていた
収録が終わってからずっと電話で会話を続け、朝を迎えた日もあった。
なのに笑って会話している自分に驚きもした。
結局ずっと和杷とも連絡が取れず、独りぼっちの年末を迎えた日アイツは新人賞を当然のように受賞し、日本の伝統番組でも華を沿えた。
今日は電話くれないよね…なんて思う程心待ちにしていた自分がいた。
「馬鹿みたい。そんなの当り前じゃない。向こうはトップアイドルで私はアイツの何でも無いんだから…」
独り言を呟きベッドに身体を投げ入れるが眠れる訳もなく、電話を握ったまま天井を見つめていた。
ため息と同時に深夜のコール
「も、もしもし!」
「早いな~…もしかして待っていた?」
「べ、別に待ってなんかいないもの。たまたま電話が近くにあったから」
どうして素直に『待っていた』と言えないんだろうって自己嫌悪
「そっか。なぁ~…?見ていた?」
「うん。見ていたよ。凄かったね?おめでとう」
「ありがとう」
物凄い歓喜の声が返って来た。
「あの、私っ明日なんだけど…」
「おぅ!明日だからな?ちゃんと来いよ」
本当は断ろうって思った。
和杷と連絡が取れない中、1人で行くのは嫌だったから…
なのにその嬉しそうな声に言葉をなくしてしまった。
「う、うん。解ってる」
それから何を話したか全く覚えていない。
遠くでもう1人の誰かが会話をしているかのように、自分自身は蚊帳の外にでもいる感覚だった。
「それじゃ?待ってるな?」
「うん。それじゃぁね?」
電話を切ってから動揺を隠せなかった。
-私…変だ…何だ…何が起こってるの…?混乱する-
結局何の解決も見出せず朝日は昇る…。
合鍵を持っている和杷が突然あがり込み抱きついてくる。
「ごめん。恵美、一人にさせて」
「うにょ?ななな、何?」
「行くんでしょ?コンサート。行こう…一緒に」
「うん。そう、そうだよ!私言いたい事沢山あるよ!」
「もう、いいってば、移動しながら聞くから」
強引に手を引かれ家を出る。
和杷のマネージャーが運転する車に図々しく乗せてもらい会場へ向かう
その間色々話した。
結局、電話や家を教えたのは和杷!
あまりにも真剣だったから教えたそうだ。
その事については本気で謝るので許してあげる恵美。
「もぅ!いいよ…許してあげる」
「エヘヘありがとう」
「ねぇ?和杷、どうしてアイツは私にそんな執着?したのかな…むしろ嫌っている相手なんてシカトすればいいじゃない?」
「ご、ごめん…そんなに嫌いなの?」
「あぁ…いや、そうじゃなくて…あの時の私がとった態度だよ…」
「じゃぁ今は好き?」
和杷がニコニコするので恵美は和杷を軽く叩く
「どうしてそうなるのよ」
「あはは…う~ん、私はわかんないけど…凄い真剣だったんだよね。切羽詰っているって感じ?」
「どうして?」
「知らないよ。聞いてみた?」
「ん~~聞いて無いかも」
思い返してみれば聞いていない。
どうしてあの日来たのかって理由は、やっぱり理解出来なかったしそれ以来そういう会話にはなった記憶は無かったから。
「だったら聞いてみたらいいじゃん」
和杷にそう言われ、素直に頷いた。
更新日:2009-02-04 02:37:35