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第三章 『空白』 1989.6~

==1989.6月某日==

 何事も無かったかのように実家へ戻り、何事も無かったかのように生活をする恵美。
 父とは会話をした覚えが無い。
 彼は母が他界してから女に狂っていた。
 そのせいで娘に強く言えないのだろう。
 可愛そうなのは妹だった…
 育児放棄という虐待にあっていたと言っても過言ではないだろう。
 それを悔いる事もせず、純粋に生きていた。


 騒音の少ない街…
 そこそこ都会ではあるが、東京と比べたら月とすっぽん…
 恵美は悪い友達と会う事が多くなる。
 彼女自身が法にふれるような行為はしてないとはいえ、決して良い行動とはいえないのも事実。
 無免許運転をしているのを知っていても車やバイクに乗せてもらったり、学校にも行かず遊んでいたり…あえて法に触れるとすれば、タバコとお酒を無理して覚えた事。

 そんなある日グループの一人≪ジュンジ≫から告白をされる。
「や…あの…わたしは…」
「男いないんだろう?そんな話し聞いた事ねぇし」
 学校で1番目立つ存在、下手をしたらよその区域でも1番なんじゃないだろうかと噂が立つほどだ。
 バンドなんかもしていたりするのもあり人気もあるのだ。
 そしてカズにも似た空気を感じる程、悪い奴だけど憎めない良い奴!という印象だったのだ。
 恵美は何故かすぐに断る事が出来なかった。
「考えるって事は脈あり?」
 一瞬で我に帰り慌てて断りを入れる。
「ごめん。少し待って…私彼氏いるんだ。東京に…」
 恵美は続けた。
 あえて何処の誰とまで話さず『突然連絡が途切れた』とだけ伝える。
「相手ってゲイノウジン?」
「え?あぅ。まぁ~そうなるのかな…。でもほら?社内恋愛みたいなもんで、学生で言うと、ガッコのヤツとかと同じで…その」
 少し動揺して説明をしようとするが、頭をくしゃりと撫でられる。
 カズ以外の男に頭をこういう風に触られたの初めてだよと思いつつ、何故か嫌ではなかった。

「解った。俺は恵美がソイツと別れるまで待ってるって感じでいいの?」
「へ??あの、でも、私…まだ…」
「あぁ、いいよ。解ってる」
 そういうとジュンジは走り去っていく。
 あまりにも突然な展開に思考が付いて行かない。
 はっきり断ることが出来なかったのは、カズみたいに強引に話しを進めるから
 どうしていいかも解らず恵美はそのまま家路と付き、自室に入る。
 携帯電話を見てみるがやはりカズからは着信が無かった。
「もういいよ」
 小さく呟きベッドへ転がり込む。

 自分が何をしたのだろう…それが解らなかった。
 自然消滅…?
 何故私達はそうならなければいけないのだろう。
 そう考えていた。
 考えないようにしていたが、やはりジュンジとの事がきっかけで再び考え込む事になってしまう。

 傷つけられたのは私で…
 犯されそうになったのも私で…
 でも、泣かせてしまったのは事実…
 それは私のせいなのかな…?
 何故連絡くれないの?
 何故………??

更新日:2009-01-31 13:05:03

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