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影の騎士

<アントニー>
毒の霧があった谷を抜け、俺達は奇岩山を目指す。
その途上に洞窟があり、そこで俺はチョコボから降りた。
アン「おめぇとの旅もここまでだな。」
チ「クエッ、クエッ。」
アン「正直俺も寂しいけど、オリビアを取り戻すまで待っててくれ。何か困った事があったらジャドの町に行け。ナナがおめぇの事を気に入ってたみてぇだから、悪いようにはしねぇ筈だ。」
チ「……。」
アン「……。」
チッ!こいつの目を見てると、何だかオリビアを思い出すな。
アン「勘弁してくれ。そんな目をされたら余計に別れ辛くなっちまう。」
チ「クエッ。」
俺は背を向けて呟く。
アン「さっき言ったオリビアは、俺が来るのをずっと待ってんだ。だからおめぇも、もう少しだけ待っててくれ。じゃあな!」
そのまま走りながら洞窟へと入って行った。

俺は心の靄を振り払うかのように先へと急ぐ。
奥に潜んでいた『フルメタルハガー』を倒し、出現した隠し通路から洞窟を抜ける。
更に続く道をひたすら進み、ようやく奇岩山の洞窟に辿り着いた。
アン「やっとここまで来たか……。」
ここを越えれば、いよいよオリビアが待っているグランス。
アン「グランス……か。」
俺の脳裏にあの頃の日々が蘇る。ウィリー、アマンダ、そして……
アン「シャドウナイト!」
あの時よりは強くなっている筈だが、果たしてそれが奴に通用するレベルなのだろうか?
アン「オリビアを自由にするにはそれしかねぇんだ!!」
そう口に出した俺は改めて、レスターの為にシャドウナイトに喧嘩を売ったアマンダの愛を痛感した。
アン「俺も口先だけじゃなくて行動で示さねぇとな。」
オリビアを愛する人と宣言したからには、邪魔をする奴は誰であろうが排除しなきゃなんねぇ。
アン「……。」
武者震いが止まらねぇ!それでも俺の頭の中には、退くという選択肢は無かった。
背中には色んな人の想いが、そして身体の中にはアマンダの遺志が宿っているからだ。
アン「行くぜっ!」

……と意気込んで洞窟に入った俺は、早くも最大のピンチを迎えていた。『ゴーレム』の凄まじいタックルを受け、立つのがやっとの状態にまで陥った。
アン「チッ!こんな所でまごついてる訳には……!!」

オ「ですからアントニーさんも、けしてご無理をなさらないで下さいね?」

アン「そうだな、君の言う通りだ。」
俺は何とか入口から外に飛び出した。
ズーンッ
ゴーレムが壁に激突する。さすがにあの巨体でも壁を破壊する事は叶わないようだ。
ゴ「……。」
その後ゴーレムは最初の位置に戻り、そのまま停止した。
アン「とりあえずここはスルーだな。」

俺は道を変え、先へと進む。
アン「出口?……いや、空洞か。山の中の洞窟だからこれだけ広い空洞があっても不思議は……!」
気配を察知して身構える。
アン「鉄球!?……つっ!」
飛んで来た物は躱せたが、それが砕いた岩の破片が頬を掠めた。
アン「一つ目の巨人『サイクロプス』か。」
サイクロプスはその鉄球……モーニングスターを手繰り寄せ、改めて狙いを定める。
今の戻している時の隙を突けばいけるか?
俺は剣を構え、徐々に距離を詰める。
ブンッ
モーニングスターが放たれ、俺は避けると同時に懐に飛び込む。
アン「!」
振り下ろされた左腕を、すんでの所で躱す。
アン「危ねぇ!……っとと。」
間髪入れずに戻って来たばかりの鉄球が飛んで来る。
アン「ゴーレムといい、こいつといい、でけぇ割には機敏だな。」
とはいえこいつにも逃げてたら、一生グランスには辿り着けねぇ!
ブンッ
距離を取れば鉄球が、近付いたら豪腕が飛んで来る。正面から挑んでも勝ち目は無ぇ!
アン「それなら……。」
俺は近くにあった巨大な岩に身を隠した。
ブンッ
鉄球が岩の頂点付近にめり込み、破片がパラパラと落ちて来る。
アン「チッ!休む暇も無ぇな。」
俺は手に魔力を込め、ブリザドを放った。
アン「ギリギリまで遠隔操作して……ここだ!」
(※筆者注 このゲームのブリザドは十字キーで軌道を変える事が出来る。)
ブリザドに気付いたサイクロプスはモーニングスターで迎撃する。
アン「ファイア!」
反対側に回り込んでいた俺は、走りながらファイアを放つ。サイクロプスは空いている方の腕で炎を防ぐ。
ボンッ
爆発でサイクロプスの視界が遮られている隙に、俺は真横に回り込む。
アン「いけぇぇぇっ!!」

アン「どうにか勝てたな……。」
サイクロプスは消滅し、宝箱だけが残っていた。
アン「これは……モーニングスターか。」
勿論、俺が扱えるサイズの代物だ。
アン「硬い物を粉砕する、か。」

更新日:2011-06-22 23:40:04

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