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ハツモウデ。

1月1日0:05、毎年玄関のチャイムが鳴る。
扉を開けると、幼馴染の玲斗が立っている。

「あけおめ」
「あけおめ」
「じゃぁ、行くか」
「おう」

毎年の恒例行事。
新年早々、男二人で色気の無い初詣。

「あーあ、来年こそは、彼女と初詣に行きたいなぁ」
「えー、いいじゃん。色気の無い初詣も、それはそれで面白いって」

雑談を交えながら、夜の先頭車両に乗り込む。
目指すは、3駅先の有名な神社。

「じゃぁさ、来年はお互い彼女作って、4人で初詣ってのは?」
「それなら良し!まぁ、問題は彼女が出来るか・だけどね」
「大丈夫だって、明都、綺麗な顔してるし」

冷たい手が、僕の顔に当たる。
何故だか僕の胸の鼓動が高鳴った。

「僕じゃなくて、君だよ、君」
「ハハハ…それもそうだな」

隣の駅に着くと、大勢の人が乗り込んで来た。
皆、目的はあの神社だろう。

玲斗は、僕を壁側に寄せ、僕を人混みからかばうような体勢になった。
自然と、お互いの体が密着する。
そしてまた、僕の胸の鼓動が高鳴る。

恋?
…それは無いだろう。玲斗は男だ。

何か心臓に異常でも?
…そんな感じでもないか。

結局、胸の鼓動の正体は謎まま、神社近くの最寄り駅に着いた。
人混みに流されつつ、神社へと向かう。

途中、玲斗とはぐれそうになってしまった。
すかさず玲斗が僕の手を掴む。
掴まれた手が冷たい。

そしてまた、胸の鼓動が高鳴る。

僕は一体、どうしてしまったのだろう?
考えてもわからないまま、境内に到着した。

僕達の順番が回ってきた。
「玲斗、いつまで手、握ってんだよ。お賽銭が出せないだろ?」
「あぁ、ごめん」

僕の体温で温かくなった玲斗の手が離れる。
急に、握られていた方の手が、寂しさを感じた。

財布から小銭を取り出し、お賽銭を入れ、拝む。
願いは、志望校に合格する事。

「なぁ、何お願いした?」
玲斗は無邪気そうに聞いてくる。
「志望校合格に決まってるだろ?僕達、今年から受験生なんだよ?」
「あ、そっか」
「ったく…相変わらずヌけてるな。で、君は?」
「ん?」
「そんな事聞く位だから、君は他の事をお願いしたんだろ?」
「まぁね。…好きな人と両想いになれますように、って」

珍しい…。
恋愛に関しては、無頓着な玲斗が、色恋沙汰を神に願うとは…。

更新日:2009-01-04 15:24:15

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