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星 ネギ 携帯

 一人暮らしを始めて1年が経過しようとしている。
 毎朝県を2つ3つ超えて大学に行くよりは、と過保護な両親はようやくアキを放してくれた。
 中学生の時はともかく、高校生になっても門限は6時と両親は譲らず何度も衝突した。その度に「私たちはこんなに心配しているのに」と見る人の口を封じるような顔を向けられた。
 あの時より少し大人になった今は、あそこまで反発することもなかったんじゃないかと思うけれど、遊びたい盛りの娘を抑えつけようとした両親にも非があった、つまり五分五分だったと思っている。あの出来事を通して学んだことは、心配とエゴの境界線はとても微妙ということだ。
 アパートの部屋の空気が冷えているから明日は鍋をしよう、と決めたのはいいものの、飲み会だの打ち上げだので友達は忙しいらしい。一人鍋かぁ、と空気に融かしてみる。白い息はほわ、と消えていく。
 始めての一人暮らしに終われていた入学当初は、学校で出される課題を丁寧に仕上げる暇を与えず、サークルが存在することを知ったのは少し前のことだ。
 スーパーの袋から頭を出しているネギを視界に入れながら、その時のことをアキは思い返していた。

 高校2年の時から付き合っていた市田くんと別れることになり、グループ学習の時間に増田くんがミスをしたせいで9時近くまで学校に残るはめになったり、入学してから1ヶ月で学食の味に飽きてしまったり、どうして自分がここにいるのかわからなくなったり、なんだかもやもやした日々だったよなぁ、とアキは星空を見上げた。市田くんの名前を携帯から消すのに3週間ほどかかったこととか、武美先生カッコイイと友達とはしゃいでいたこととか、時間なんかないくせにバイトを探したリだとか、今となっては全部ふふふと笑う程度になってしまった。
 大学生になってるんだな、と実感し高校の友達を裏切ってしまったような、そんな気持ちを抱えながらアキはアパートへ歩みを進めた。

更新日:2009-01-28 15:40:50

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