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幕間 出撃

「おふくろ!! 大変だ!! 火族だ、さっきの女は火族だ!!」
 幸次は商店に戻るや否や、大声を上げた。
 その声に驚いて、店に残っていた奏と晴菜が一斉に顔を幸次に向けた。
「何ですって!?」
「しかも、追いかけていったヒカリちゃんがそいつにさらわれた!!」
「さ、さらわれた……!?」
 幸次の報告を聞いて、晴菜は顔を青くしてしまい、思わず幸次に詰め寄る。
「さらわれたって、どういう事ですか!? ヒカリちゃんに何があったんですか!?」
「どうも何もない。言った通りの緊急事態だよ、お嬢ちゃん」
「なら、すぐに警察呼ばないと――」
「それは俺達がやっておく。だから今は、店の外に出て待っていてくれないか」
「……はい!」
 晴菜は幸次の言葉を疑う事もなく、素早く店の外へと出ていく。
 すると、それを見計らった奏が、いきなり入り口のシャッターを閉めてしまった。
「え、ええ!?」
『閉店』と大きく書かれたシャッターが、商店の入り口を固く閉ざす。
 晴菜は何があったのかとシャッターの向こう側に呼びかけたが、返事が返ってくる事はなかった。

「こんな時間に緊急出動ですか!?」
 奏と幸次だけが残った店内に、奏に召集された暁が駆け付けた。彼は緊急時に備えて、店内に待機していたのである。
「ああ、何だか知らねえが、火族の女が万引きをしやがったんだ。で、逃げた所を追いかけたヒカリちゃんがそいつにさらわれた」
「ヒカリってまさか、司ヒカリの事ですか?」
「ああ」
 幸次の説明を聞いた暁は、またあいつかよ、と舌打ちしながら吐き捨てた。
「その火族の特徴は?」
「ああ、一言で言うと、奴は普通の火族と違った」
「普通の火族と違った……? どういう事ですか、幸次?」
 奏が問う。
「思い出してみろ、おふくろ。さっきここで爆発した炎は、青かったじゃないか。そいつは、俺にも青い炎を放って攻撃してきたんだ。青い炎を使う火族なんて、聞いた事がない」
 幸次が説明すると、暁の目が一瞬大きく見開かれた。
「瑠東さん!! そいつは、黒い髪に青いメッシュが入った女じゃありませんでした!?」
 そして、暁は幸次にいきなり強く問うていた。
「あ、ああ、そうだったが……って、そいつまさか――!!」
「間違いない。火滝火那……!!」
 暁はそうつぶやくと、その場に置いていた疑似炎装『ファイアブランド』を手に取り、何かに駆られるように店内を後にした。
「お、おいちょっと新道!! とにかくおふくろ、行ってくる!!」
「ええ、気を付けて」
 暁を追いかける前に、幸次は奏に一言言ってから、店内を飛び出した。

「この日を、待っていた……!! 俺の人生を狂わせた、あいつを倒す日を……!!」
 裏口から外に出た暁は、強い怒りを抱いているかのように、つぶやいていた。

更新日:2011-06-02 22:23:52

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