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第7話 翔太郎の父は母の命の恩人 その1

母は、僕が言うのも何だが、昔からすごい美人だったから父は、見向きもされなかったそうだ。
父と母は幼なじみで、母はよく、母を好きな男の子からいじめられたり、スカートめくりやたくさんの嫌がらせをされてたらしい。そんな時は、いつも父がやっつけていた…つもりだけど、大概負ける。
それが悔しくて柔道場に通い、密かに強い男を目指して居たのだ。
父のお腹には、傷があった。
僕がまだおねしょをしていた夏の暑い日、お庭で父がプールを広げ二人で遊んだ時のこと。
「翔太郎!お前も強い男になるんだぞ!パパみたいにな!」と言って見せてくれたのが、その傷で僕は、「強くなったら、こういうのできるの?」父は、豪快に笑い、自慢げに話してくれた。
「パパは、柔道習ってたんだ!そりゃー強かったんだぞ!県一番だったんだ!」
「けん?土佐犬の五郎丸みたい?すごいなぁ。」それは、近所の僕がとっても恐かったけど大好きな犬で、将来何になりたいか?って聞かれたら、迷わず「土佐犬の五郎丸!」って言っていた頃だから、僕はその日から「パパみたいに強い男になる!」とかなり勘違い野郎だったけど、本気で思った。父もあえて否定もせずに、笑顔で「翔太郎も学校行くようになったら、柔道習って強い男になるんだぞ!」「うん!」

父が県大会で優勝した日、偶然二人は駅で久々の再会。夜も更け人通りの少ない時間に。
二人で遊んだ昔話とかで、盛り上がり、よく男の子にからかわれているところをかばって、逆にやられていた痛い思い出話やら。
父は県大会で優勝した話をしたかったのに、いつの間にか、思い切り凹んでたそうだ。
母はその頃、ある男に付きまとわれて居たが、まさかそんな男とは知らずに、一度だけ食事をしたが、それ以来すっかり彼氏気どりで、何度も誘われてたらしい。しかし、母はその都度、丁重にお断わりしていたそうなんだ。


2006/10/22 (日)

更新日:2009-01-06 19:18:39

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