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小説

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すっかり、日が沈み、周りを静寂が包み込んだ。
疲れて項垂れていたが、心を落ちつけたくなり、煌凛は部屋を出た。

装飾の見事な回廊をあるく、隣の宮まで続くそれはまるで朱色の蛇のようだ。
うねうねとした道を光の無い方向へひたすら歩く。
今日は誰にも会いたくない、目的地のない散歩だが、はずれまで歩いた時、
嫌でも彼女の足は止まってしまった。

立派な門がそびえている、その先には大きな運河が流れていた。

”迎水坊”王宮に繋がった船着場だ。
昼間ですら許可を得た一部の者しか使わず、まして夜は危険なため、誰も利用しない。
人など誰も居ないはずだった・・・本来なら。

「帝辛(ていしん)」
思わず呼びかけた言葉に、その人影は一瞬、小さく揺れた。
門に寄りかかるようにして眺めていた男が振り返る。
懐かしい銀色に輝く瞳がこちらを見据えた。

「煌凛・・・」
月が明るく、その顔がよく解る。
帝辛の背後の運河が月の光でキラキラと輝いた。

「呼び出した癖に、会ってくれないなんてあんまりね」

皮肉を込めた言葉だったが、その言葉に感情はこもっていない。
帝辛が困ったように顔を背けると、煌凛は笑った。

更新日:2011-05-08 00:55:43