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「なんて事を!」
戻ってきた掌那の説明を聞き、煌凛は青ざめた。

「やっぱり、あの男、只者じゃないわ」
掌那は冷静に言う。
「誰も王に逆らわなかった、それどころか王に賛同する宰相までいたのに・・・」

煌凛は身震いをする。
「まるで、国を帝鴻が手のひらで転がしているみたい」
今までの王もきっとみなそうなのだろう、実際に動かしているのは、あの男だ。
煌凛は掌那の方に向き直り、何かを話そうとした。だが、ふとあるものに目が止まる。

「・・・どうしたの?」
掌那は、煌凛の見ている方向に目をやる、蝶が一匹、室内に迷い込んで羽ばたいていた。

「蝶?」
「珍しいわ、真紅の蝶だなんて・・・」
煌凛は呟く。だが、そんなことに気を取られている時間は無い。

「唯一、力になりそうなのは、雪鳳様のようね」
帝辛が下した結論だとは言え、本人が本当にそれを望んでいるとは到底思えない。

・・・自分がなんとかしなければ。

「掌那」
煌凛は掌那を見据える。
「私、雪鳳様と話をしてくるわ」
「何を!?」
掌那は思わず声を荒げた。

「宰相である雪鳳様が、直接、貴女と話をするなんて思えないし、大体、何故、事情を知っているのか疑われるわ!」
「・・・・それでも」
煌凛は意思を曲げない。

「逆らわなくちゃ・・・そうしないと、この国は帝鴻の思いのままだわ」
話を聞く限り、雪鳳は信頼するに十分な人物だと思う。
もし、この事で落ち度があり、煌凛が罰せられる事態になったとしても、彼女にはその覚悟が出来ている。

更新日:2011-05-29 23:22:17

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