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小説

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「もし、我が悩み苦しんだ時に、お前は我に協力できるか?」
あの人の言葉が忘れられない。

「誰も信じられず、どうすることも出来なくなっても・・・お前だけは味方で居てくれるか?」
彼はそう言った。あの日、私はそれに頷いた。

それが私の初恋だったのだと、気づいたのはだいぶ後になってからだ。
自分が夫を持ったとき、よく似た幸福感に包まれたから。

ただ嬉しかった、彼の力になりたかった。
・・・昔なら、そうだったはずなのに。


「煌凛(こうりん)」
鋭い目つきの娘が声をかけた。

「・・・あっ」
物思いにふけってしまった。煌凛は我に返る。
横に立っているのは、侍女だ。あるきっかけで、恩人として身を尽くしてくれるようになった。
命を盾にして、煌凛の弟を守った事もある。

「ごめんなさい、掌那(しょうな)」
「どうしたの?」
掌那が怪訝そうに覗き込む。いいえ、と言って煌凛は窓に目を映した。

外には池が作られていた。小さな橋も掛けられていて、大変見事なものだった。
今日は天気が悪く、鉛色の雲が広がっている。
晴れた午前なら、池に咲いている蓮がとても綺麗だろう。

そんな贅を尽くした庭、建物が幾つもここにはひしめいている。
煌凛が暮らしていた国も大変豊かな所だったが、ここの比ではない。

ここは世界の中心、国々を束ねる、商の宮殿だ。

更新日:2011-05-08 00:27:37