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占い師の実情と悪戦苦闘の始まり

家から出た私は、直ぐに竜昇館に向かっていた。
昨日が土曜だったので、今日は学校休みだったからだ。
この思いを竜昇先生に伝えたかったからだ。
繁華街にある店を訪ねてみると、20代前半の女性OLの方が相談に来ていた。
常連らしく、竜昇先生とも親しげだった。
「こんにちわー」
と、恐る恐る店に入っていった。
「おや、こんにちは。どうなされました、川那さん?」
私の名前を覚えてくれていたんだ……!
やっぱり凄い人だな、竜昇先生って。
「あらー? 高校生さん? 先生モテますね?」
OLさんが先生を冷かしていた。それの動じる事も無く。
「昨日、来られたばかりのお客様で、十代ならではの悩みを抱えていたんですよ」
「へぇ。やっぱりその年頃って悩むのよねー。分かるわ~」
OLさん、金井美香子さんと言う方だった。職場の雰囲気の悪さに酷いストレスを感じていて、休み時間を利用してここで相談と言うか、愚痴を言いに来ているそうだったの。
やっぱり、大人でも愚痴を言いたくなるんだね……
色んな方が居るんだなーって思った。
日曜なのに働いているんだなーと思いつつ、大人の世界って大変だなって思う。
「先生、そろそろ私行きますね。お昼休み終っちゃうから」
「ええ。また来てください。何時でも悩みを聞きますよ?」
そう笑って、美香子さんを送り出していた。
慣れているなぁと言うのが正直な感想だった。
占い師になると、やっぱり色んなお客さんが来るんだろうな。迷惑な方も来る可能性もあるわけだ。それは覚えておかないといけないな。うん。
「で、どうなされたんですか? 川那さん」
「私も占い師になれないかなーって、思ったんですけど……?」
「ほう。占い師に。それはまたどうして?」
「昨日相談に受けた後、思ったんです。人に役立てる何かになりたいって。そうしたら竜昇先生を思い出して……そして占い師になれたらどうかなーって」
「ふむ、成る程。悪くない考えですがそう簡単になれるものではありませんよ? それなりに学ばなければならない基礎と言う物が有りますよ。まずは勉強しなさい。お勧めの本が有るのですが、イーチンタロット(とうようたろっと)の勧めと言う本です。これを貸してあげますから、読んで学びなさい。分からない所があれば教えますから」
「……イーチンタロットの勧めですか?」
本を見ると、相当読み込んであるらしくかなりボロボロになっていた。先生これを一生懸命読み込んでいたんだなぁ。色んな事も自分で書き込んでいた。やっぱり竜昇先生ってすごいよ!
「いいんですか?……大事な本を私なんかに?」
「構いませんよ」
ハハハと晴れやかに笑う先生。この先生は気取らない所が素敵なんだよね。
「もう十分に読み、覚えていますからね。新しく占い師になろうとしている卵さんに役立てるなら、本も本望と言う物。読まれて初めて本は意味を成すのですから」
「あ、有難う御座います!!」
私は深く頭を下げた。本を大事に持ちながら。
「それと、さっきも言いましたが分からないと事があったら聞きに来なさい。それに現場を知るのも良い経験になりますよ?」
先生、優しいよー。また感動でしてしまった。
「じゃ、この本借りていきます。大事に読ませてもらいますね!」
「ええ。ではまた」
こうして先生と別れた私は家に帰って来た。
それからが悪戦苦闘の連続だった。

更新日:2011-05-09 14:55:16

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もしウラ(もしも私が占い師になったら)