• 6 / 1302 ページ

風の回廊>水の記憶>奇蹟は雪のように舞う…8

挿絵 100*150

「きっときみはこない、イブ…」
 銭湯の先の角を曲がった聖子は、そこだけぼんやりともる外灯のなかに歩み入る. そのとき、ふわっと、聖子の意識が、みっつに分離した. 粉雪がわずかな風に舞う. 「わたしはキム...」その意識 は、夜の雲海を見下ろす機内の窓から. 「ここは、暗すぎるの...」その幼い意識は、静寂の底から浮かんでくる. みっつの「意識」は、やがておなじ思いに包まれる.「おかあさんは、どこ?」 聖子の歩みが灯の中で止っていたわけではなかった. 正確にもんたが待つ店へと歩いていく. 聖子の後影が外灯から消えると、粉雪が空に向かって舞い上がった、…イブ、奇蹟は雪のように舞う…

更新日:2009-01-08 18:01:32

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook