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風の回廊>水の記憶>奇蹟は躊躇を繰り返す…2007/2009

挿絵 100*150

奇蹟は躊躇を繰り返す…
 秋田県山本郡八森町字岩館村… 毎年クリスマスイブに校舎で映画会が開かれる。今年の上映は『ビルマの竪琴』、昼過ぎから3回、同じ映画を無料で上映する。 茂はもちろん最初から最後まで観るつもりで古びた体育館の後ろに座っていた。 小学5年生の茂にも、その映画のストーリーに涙を抑えることがでないで、目をまっ赤にしていた。 2度目の放映が終わって、観客の入れ替えが、ざわめきの中にはじまると、なんとなく、茂は校舎の2階へ上がってみようという気になる。 外はもうまっ暗闇で、降りつづく雪の積もり具合を、2階から観てみようと思った。  2階に二つしかない教室の手前のドアを開けると、雪明かりに室内は明るい。 窓へ近づこうとした時、茂は教室の後ろのドアが、開いたままになっていることに、(おや?) と、思った。 その瞬間、茂は金縛りにあったように全身が硬直する。身動きができなくなった茂の足元から、凄まじい激情が、少年の躰に流れ込んでくる… 『だめっ!だめよ、来ないでッ!』  …奇蹟の予感は突然訪れる、時を越えて…

更新日:2009-01-08 17:53:46

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