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3.幻想・空・翼
妻の入院先から電話があったのは、夜中の3時過ぎだった。
「おめでとうございます。元気な男の子です。ただ……」
電話口の看護師が言葉を濁した。オレは「やった!」と叫ぶはずの口を中途半端に開けたまま息をのんだ。
「ただ……」の先が気になる。予定日より若干、早い出産に、なにか不都合でもあったのだろうか。
「ただ……なんなんですか?」
オレはこわごわと聞いた。
看護婦は「ふうっ」と大きく息をはいてから「いまから来られませんか?」とか細い声で言った。
「私の口から話すより、直にお会いになるのが一番です」
オレがタクシーを飛ばして病院に着いたとき、玄関先で年配の女性看護師と仙人のような長い白ひげをはやした老人が待っていた。いや、見た目は仙人でも、長いローブをまとった身なりからして神父か牧師ではないだろうか。
まさか!
オレは目の前が真っ暗になった。神父か牧師がくるのは臨終間際と決まってる。子どもは元気だったとしても、もしや妻が……と絶望的な展開がオレの頭で広がった。が、すぐさま「待てよ」と思い直した。
ウチはキリスト教とは縁がないし、この病院は市営病院で、やはりイエス・キリスト様はお呼びじゃない。だとすれば、いったいあの老人は誰だ? オレはいぶかしげな目をむけながら、ふたりの前へと進んだ。
「おめでとうございます」
ふたりは声を揃えて頭をさげた。
「妻は?」
オレはあいさつもせずにそう聞いた。
「お元気でいらっしゃいます」
看護師の言葉にほっと胸をなで下ろす。では、いったい? オレは白ひげの老人に目を向けた。老人は人の良さそうな微笑みを浮かべ空を見あげた。
「ご覧なさい。東方にその方の星が見える。これで世界が変わりますな」
オレはいつもの2階の病室ではなく、奇妙な地下道に導かれた。その道の入り口には武装した警備員がふたり立っている。
オレは思わず「ここは病院ですよね?」と聞いてみたのだが、看護師は「こちらへ」と誘導するだけで答えてくれない。
オレは騙されているのではないかと不安を抱きつつも、看護師と老人の後をついていくしかなかった。
「おめでとうございます。元気な男の子です。ただ……」
電話口の看護師が言葉を濁した。オレは「やった!」と叫ぶはずの口を中途半端に開けたまま息をのんだ。
「ただ……」の先が気になる。予定日より若干、早い出産に、なにか不都合でもあったのだろうか。
「ただ……なんなんですか?」
オレはこわごわと聞いた。
看護婦は「ふうっ」と大きく息をはいてから「いまから来られませんか?」とか細い声で言った。
「私の口から話すより、直にお会いになるのが一番です」
オレがタクシーを飛ばして病院に着いたとき、玄関先で年配の女性看護師と仙人のような長い白ひげをはやした老人が待っていた。いや、見た目は仙人でも、長いローブをまとった身なりからして神父か牧師ではないだろうか。
まさか!
オレは目の前が真っ暗になった。神父か牧師がくるのは臨終間際と決まってる。子どもは元気だったとしても、もしや妻が……と絶望的な展開がオレの頭で広がった。が、すぐさま「待てよ」と思い直した。
ウチはキリスト教とは縁がないし、この病院は市営病院で、やはりイエス・キリスト様はお呼びじゃない。だとすれば、いったいあの老人は誰だ? オレはいぶかしげな目をむけながら、ふたりの前へと進んだ。
「おめでとうございます」
ふたりは声を揃えて頭をさげた。
「妻は?」
オレはあいさつもせずにそう聞いた。
「お元気でいらっしゃいます」
看護師の言葉にほっと胸をなで下ろす。では、いったい? オレは白ひげの老人に目を向けた。老人は人の良さそうな微笑みを浮かべ空を見あげた。
「ご覧なさい。東方にその方の星が見える。これで世界が変わりますな」
オレはいつもの2階の病室ではなく、奇妙な地下道に導かれた。その道の入り口には武装した警備員がふたり立っている。
オレは思わず「ここは病院ですよね?」と聞いてみたのだが、看護師は「こちらへ」と誘導するだけで答えてくれない。
オレは騙されているのではないかと不安を抱きつつも、看護師と老人の後をついていくしかなかった。
更新日:2009-01-04 01:49:50