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1.炎・恋・冷蔵庫
徹夜明けのその朝に、その男はやってきた。
玄関のけたたましいチャイムの音が、深く心地よい眠りについていたオレを無理矢理、浅瀬へと引き寄せた。オレは目を閉じたまま手を伸ばし、枕元の時計を布団の中へ忍ばせると、ぼんやりと目を開けた。
「まったく!」
オレは時間を確認すると、布団を頭からかぶった。誰が出てやるものか! まだ9時にもなっていない。どうせ宅配便かなにかだろう。ようやく手にした休みを、荷物に邪魔されてたまるか。
しかし、オレは次の瞬間、飛び起きた。カチャカチャと鍵を開ける音。あり得ない。合い鍵は誰にも渡していないのだ。いったい、誰が? オレは考える間もなく、あわてて脱ぎ捨ててあったワイシャツをひっかけた。
「高峰和也さんですね?」
ドアの前に立っていた男は、20代前半と思われる若者で、日本人離れした彫りの深い顔立ちをしていた。品のいいスーツに身を包み、深々と礼をしたその態度は、勝手に人の部屋の鍵を開けて入ってきた無礼を一瞬忘れさせた。
「実は、わたくし、こういう者です」
オレが尋ねる前に、その男は内ポケットから黒革の手帳を取り出した。
「警察?」
オレはさっと青ざめた。いや、警察に追われるようなやましいことをした覚えはない。しかし、こうして手帳をつきつけられると、オレは自分が知らないだけで、なにかやらかしたのではないかと心穏やかではいられなくなる。
「いえ、警察ではありません。吸血鬼保護センターの職員です」
手帳には、コウモリをあしらった愛らしいエンブレムが刻印されていた。
「……は?」
オレはまだ寝ぼけているらしい。
玄関のけたたましいチャイムの音が、深く心地よい眠りについていたオレを無理矢理、浅瀬へと引き寄せた。オレは目を閉じたまま手を伸ばし、枕元の時計を布団の中へ忍ばせると、ぼんやりと目を開けた。
「まったく!」
オレは時間を確認すると、布団を頭からかぶった。誰が出てやるものか! まだ9時にもなっていない。どうせ宅配便かなにかだろう。ようやく手にした休みを、荷物に邪魔されてたまるか。
しかし、オレは次の瞬間、飛び起きた。カチャカチャと鍵を開ける音。あり得ない。合い鍵は誰にも渡していないのだ。いったい、誰が? オレは考える間もなく、あわてて脱ぎ捨ててあったワイシャツをひっかけた。
「高峰和也さんですね?」
ドアの前に立っていた男は、20代前半と思われる若者で、日本人離れした彫りの深い顔立ちをしていた。品のいいスーツに身を包み、深々と礼をしたその態度は、勝手に人の部屋の鍵を開けて入ってきた無礼を一瞬忘れさせた。
「実は、わたくし、こういう者です」
オレが尋ねる前に、その男は内ポケットから黒革の手帳を取り出した。
「警察?」
オレはさっと青ざめた。いや、警察に追われるようなやましいことをした覚えはない。しかし、こうして手帳をつきつけられると、オレは自分が知らないだけで、なにかやらかしたのではないかと心穏やかではいられなくなる。
「いえ、警察ではありません。吸血鬼保護センターの職員です」
手帳には、コウモリをあしらった愛らしいエンブレムが刻印されていた。
「……は?」
オレはまだ寝ぼけているらしい。
更新日:2009-01-04 02:32:41