投稿者:ウォシュレット
投稿日時:2012-06-06 19:39:03
youno senichi様の作品には、いつも、つかみどころのない
浮遊感みたいなものを味あわせていただいています。特に「平田寛治の
症例」は圧巻でした。言葉が読者の許へ空気を運んでいます。
すべての作品に言えることですが、言葉選びのセンスが随所に光り、
まるで、暗黒世界に咲く華のように、その美しさに誘い込まれます。
新作の「まろうど」は、とても不条理なストーリーですが、
産道の記憶のような心地良い既視感を覚えました。ありがとう御座います。
投稿者:鵜狩
投稿日時:2012-06-05 21:35:19
怖い、恐ろしいという感情よりも、不思議なものを見たという感触が強くあります。
そして散りばめられたパーツたちがひどく魅力的でした。伝承、行方不明の語りから始まり、熊の頭、女神たる人形、ルールと得体の知れないゲーム、妖怪たちとそのペット、そして小指。
謎と僅かな本当が茫洋と茫漠と浮かぶばかりで、輪郭を明瞭としない。その有様が異郷を垣間見たという印象を強くします。
そして村田さんの行く末が気になるところです。語られた伝承の通りならば、と悲観的に考えてしまうのです。
もし最初に彼女の実家を訪れた折、翌朝に約束がなかったならこのふたりは、などと思います。妻だからとの言葉をひどく切なく感じます。
そうしてもやもやとしたものを抱いてしまうのは、それだけ物語に惹き込まれたという事になるのでしょう。
まろうどの感想