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貢サイド-4-

 光が家に通うようになってから二週間が経った。
 夜、光の腕の中で泣く事は無くなったが、朝になり、光が帰ると必ずあの幻覚を見た。
 幻覚は俺の脳が見せているのだろう。
 何故なら、幻覚の光は俺にとって都合のいい事ばかり言うのだから。
 俺が何よりも大切だと・・・・・・。
 俺だけが大事だと・・・・・・。
 言われれば言われるほど不安になった。
 幻覚から覚めると無性に光に会いたくなり、急いで学校へ行くが、多忙な光には中々会えない。
 たとえ会えたとしても、直ぐに誰かに連れて行かれてしまう。
 そんな時痛感する。
 光は俺のものではない事に。
 考えてみれば俺と光は恋人でもなんでもない。
 それどころか友達ですらない。
 ただの知り合い。
 そう思うと胸が痛んだ。
 最初はただ眠りたかっただけなのだ。
 眠る為の抱き枕が欲しかっただけなのに・・・・・・。
 何時から光自身が欲しくなったのだろう?
 光を俺だけのものにしたい。
 何処にも行かず俺の傍に居て欲しい。
 そう、渇望すればするほど不安になった。
 望まないモノは何でも手に入ったが、本当に欲しいモノは絶対に手に入らない事を知っているから。
 どんなに頑張っても、どんな事をしても、本当に欲しいモノは手に入らない。
 俺に出来る事は諦める事だけなのだ。
 諦める・・・・・・?
 光を・・・・・・?

更新日:2011-03-26 19:25:54

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