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悪女


朝、窓から射し込む明る過ぎる日差しに、目も開けられなくて
昨夜、確かに、そこに居たはずのシーツの上に、手を伸ばしてみる。

啓祐の温もりも、もう残っては、いない。
あれから何度も抱かれて、日付の替わる頃に、帰って行った。

私は、いつもひとりで取り残される。このベッドに。

彼は、彼の家庭で、目覚める。
お嬢さんが、起こしに来るんだろうか ?
「パパ、起きて」なんて、可愛い声で・・・。

奥さまの作る朝食を美味しそうに食べて・・・。
曲がったネクタイなんか直されて・・・。

想像するだけで、余計に辛くなるのに。


啓祐が、離さないと言ってくれた言葉すら虚しく聞こえる。
やっぱり間違っているんだと明るい日差しに、教えられる。

夜という名のカーテンに、閉じ込められた空間だからこそ
成立する恋愛なのかもしれないと、ふと思った。

ひとりでシャワーを浴びて
昨夜、啓祐に、愛された痕跡を消そうと試みる。
啓祐を愛してる気持ちも、体の中から引き剥がして
洗い流してしまえたら、どんなに、いいだろう。
苦しい。苦しくて、息が、出来ない。

シャワーのお湯を顔にかけて、涙を洗い流す。
いつも、この時間は、自己嫌悪に苛まれて
この世界から、消えてしまいたくなる。

どうして不倫なんて、しているんだろう ?
自分が、どんなに悪い女なのか思い知らされる。

それでも、啓祐からは、離れられそうもない私が、いる。

いつか・・・
酷い目に、アワサレルカモシレナイ・・・。

そうなればいい・・・
冷酷に、自分を蔑んでいる私が、どこかに居る。


クリスマスから、お正月休みが、終わるまでは、暫く会えない。
2週間と少し、そんなことは、今までにも、いくらでもあった。

お店は、元旦の1日だけが、お休みで、あとは、営業。
実家に帰るバイトの子の替わりも引き受けた。
忙しくて帰れないと実家には、電話を入れた。
両親の顔をまともに見られそうもない私の、せめてもの言い訳。


髪も乾かして化粧もして、昨夜は、突然で、着替えは、持っていない。

きょうは、早番。コンビニで、朝食を買って早めに入ろう。


この日、意外な人に、ホテルから出るところを見られていた・・・。

朝一番で、上司の商談に、付いて行く、シュウに・・・。

更新日:2010-08-13 21:12:56

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