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特異点とマイケル君の部屋

扉の向こうに何があるのか?
私の予想もしない場面展開である。
さて、どれかが元の時空に戻れる扉らしいのだが、少し信用出来ない。
疑心暗鬼、慎重、どちらでも無い。
こんな馬鹿げた一言を残してふざけるような真似をしているのだから、どう考えても不真面目なクイズ問題、いやナゾナゾのようなものだ。

光は一秒間に地球を七周半出来ますか?と問題を出しておいて、光は直進するので七周半回れませーん!なんて答えを出してくるようなものだ。

僕の疑念は、確実に確信に変わっている。
一つの扉の前で立っている棗君の前には『故障中につき、この扉は開けないでね』なんて書いてあるのだから、俗物的過ぎる言い回しに腹が立ってきた。

僕は、その故障中云々と書いてある扉を開けようとした。

「先輩!故障中って書いてありますよ」
「良いんだ、こんな不真面目で軽薄は張り紙するような奴の性格ならば、この扉は壊れていない」
「そうですか、先輩が言うのですから、私は従いますけど」
「まぁ、結果は分からないが、開けない事には、その先の時空が覗けないからね」

私は、扉のノブを回して引いた。
思い切り引いたが、扉は開かない。
え?本当に故障中?
ちょっと焦った。焦燥している。
冷たい水分が、私の額を流れ落ちていく感覚だ。
まさか、裏読みして大ハズレを引いてしまったのか?
あれだけ確信めいた啖呵をきって、それは無いだろ?
力いっぱいに扉を引いても開かない。
ならば押すまでだ。
どうせ、ひねくれて、軽薄で、洒落たつもりになっている相手の事だ。
引きドアと見せかけて押して開く作りだったりするのではないか?
私の考えをあざ笑うかのように、故障中の扉はびくとも動かなかった。

更新日:2010-06-10 22:36:37

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