- 64 / 317 ページ
slow start
春一番が吹き荒れた翌日、イギリスに旅立つ若者ひとり。
出発ロビーに集まるさまざまな人種・旅立ち・見送り・家族・
ビジネスマン・・・
そんな雑然とした様子を眺めるのが清四郎は好きだ。
手に持っているコーヒーはすでにぬるい。
搭乗案内を聞きながら、ゆっくり歩き始める。
ふと月明かりに浮かぶ野梨子の寝顔を思い出した。
(これからは・・・他のことを考える余裕なんてありませんね。
そう、できるだけ忙しい方がいい。できるだけ・・・)
それでも清四郎の頭の中では、自分を呼ぶ野梨子の声がいつでも再生できる。
コートのポケットに入れた手が何かに触れた。
それは使いこんで柔らかになった革の定期入れ。
出発ロビーに集まるさまざまな人種・旅立ち・見送り・家族・
ビジネスマン・・・
そんな雑然とした様子を眺めるのが清四郎は好きだ。
手に持っているコーヒーはすでにぬるい。
搭乗案内を聞きながら、ゆっくり歩き始める。
ふと月明かりに浮かぶ野梨子の寝顔を思い出した。
(これからは・・・他のことを考える余裕なんてありませんね。
そう、できるだけ忙しい方がいい。できるだけ・・・)
それでも清四郎の頭の中では、自分を呼ぶ野梨子の声がいつでも再生できる。
コートのポケットに入れた手が何かに触れた。
それは使いこんで柔らかになった革の定期入れ。
更新日:2010-06-14 17:20:31