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挿絵 610*480

 出かける仕度が整いました。ラビフィーは生まれたときから棲み
慣れた家の隅々をゆっくりと見渡し、最後にパパとママを見つめて
自分自身を奮い立たせるかのように耳をピンと伸ばします。そして
グリンパの紐を頭からくぐらせます。すると鍵がラビフィーの気持ちに
応えるかのように、胸元できらりと光りました。荷物の詰まった
リュックに両腕を掛け背中に背負おうとした瞬間ラビフィーの小さな
カラダはその重みに耐えかねふらっと大きく揺れましたが、足の
にくきゅうが床を捉え彼のカラダをしっかりと支えました。
パパもママもその姿に思わず胸が詰まりそうになりましたが、巣立って
いく我が子を明るく送り出すまではと優しくラビフィーを見つめ続け
ます。ラビフィーは、パパとママに抱きつき、ふたりを見上げながら
元気に言うとにっこり笑いました。
 「行ってきます」 

 この日ラビフィーは生まれ育った家から、新たな一歩を踏み出した
のです。

更新日:2010-10-26 15:30:02

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