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チェンジ‐10



タクシーを飛ばして、約30分ほど…。

あの時の場所に着いた。


薄暗い路地も変わってないし…。

もう少し歩いたら…。


「あ…あった…」


不気味にぼんやりと明かりがついていた。


変わってなかった。

相変わらず…?。




んっ?。

中に客がいた!。




まさか!?。


あの時と同じ、上下の黒いスーツ…。


『KYO』がいた。

マスターとなにやら語り合っているようだった。


ガチャ…。
カランコロン…。


やっぱり!!。


俺を見るなり、二人の顔は驚きの表情になった!。


「おぉ…これはこれは…大有名人ではありませんか…」
「おおっ!マスター!ここも捨てたもんやないでぇ~『ミックの再来』の人がお見えになる店やもんなぁ~」
「そんな…茶化さないで下さいよ!」
「おっ!?聞いたか?さすが大物!あん時と違って人間も出来てきたっちゅうわけや!うれしいで!」


そして三人での思い出話に華が咲いた。


「マジソン決まったらしいのぉ~おめっとさん!」
「私もびっくりしてます…コウキさん…おめでとうございます…」
「いや…ありがとうございます…」


何故か二人の前では、あの時の自分だった。

その時…急に『KYO』の顔が曇った。


「だがな…あんた…まだまだやで…」
「え…?」
「KYOさん!」


マスターの話しを遮るように、言葉を続けた。


「あんた…完全にミックになってへん…」
「KYOさん!」
「だあっとれ!酒!作らんかい!」
「はいはい…わかりました…」


マスターは、苦笑いをして、カウンターの奥に引っ込んでしまった。


「マジソン…すごいやろなぁ~」
「はあ…」
「あんた…まだ足りないんや…」


そう言いながら、また『あの眼』になっていた。


「いつ行くんや?」
「来月には…リハとかがあるんで…」


『KYO』は何かを計算するように、ブツブツと言い始めた。


「よっしゃ!来週ウチに来いっ!命令や…」


あの冷たい『眼』に何も言えなかった!。


「わかりました…」
「よっしゃ!よっしゃ!決まりや!マスター!はよう酒持ってこんかい!ワシも自慢できるのぉ~」

その時の『KYO』の顔は、何故か不気味に見えた。










そして一週間後…。
『KYO』の待つ、趣味が悪くてカビ臭い『クリニック』へと行った。


「おお!待ってたで!」
「あれ?」
「なんや?」


不思議だ…あの時と全然違うぞ…?。




すっかり綺麗になってた。


あの悪趣味なホルマリン漬けの標本も無くなっていた。


「あれ?標本とか…壁に書いてあった…」
「はあ?何を言うとんのや?この前と同じやん!」
「だって…」
「夢でも見てたんやろ?そんなもんあったら患者は来いひんやろが!」


いや…絶対に違う…気がする…。

俺は部屋の中を見渡した…。
だけど…雰囲気は変わっていなかった。


「あん時はかなりイッてたからなぁ~…」
「そ…そうっスね…」
「準備しとけや…」


俺は『あの時』と同じ位置のベッドに横たわった。


「自分の夢にぃ~♪すぐムキになるぅ~♪そんなとこ♪好きだから♪とてもぉ~♪」


また歌ってる。


「よっしゃ!ほな…イクで…」
「お願いします…」
「最終段階や…コウキ…お前は今日から…完全な『ミック・リチャード』や…」
「覚えていてくれたんですね…」
「当たり前や…今日でその名前は…終いやからな…」


チクッ…。


そうだ…。
俺はミックになれるんだ…。


待ってろ…。
最高のステージをやってやるからな…。


『KYO』の瞳が…碧く見えた…。

小さく手を振ってる。




ありがとう…。




俺…頑張りますから…。




更新日:2010-01-20 00:59:20

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