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9章 四月の調査が終了した翌日から......

 しずかちゃんの湯船を見つけたスネ夫は、傍目で見ていて少々恥ずかしくなるほどに張り切っていました。
 四月の調査が終了した翌日から、私はスネ夫から内勤に呼ばれ、調査結果をまとめたり会議用の資料を作る作業を手伝いました。スネ夫はいつもひとりぼっちで仕事をしていたので、湯船の発見で急に増えた作業にてんてこ舞いでした。
 私は、ドラ焼き作りの仕事をなんとかやりくりしてスネ夫を手伝いました。特に営業活動を圧迫しているのを感じてはいましたが、スネ夫のかかえている仕事がひとりでこなせるようなものでないことは、わかり過ぎるほどわかりましたし、私自身の動機として、しずかちゃん調査の仕事にもっとかかわり、しずかちゃんのことをもっと知りたいというのがありました。
 そんなある日の午後、スネ夫はしずかちゃんの湯船にビデオカメラをしかけると言いだしました。
「ひらめいたんだ、ひらめいちゃったんだよ」
 スネ夫は、常日頃から思いつきをひらめきと呼ぶクセがありました。そして、思いつきをすぐ実行に移すクセもありました。
 私も一瞬「おっ」と思いましたが、すぐに、そのスネ夫の思いつきはとても危険なことだと思い当たりました。カメラがあることがばれたら、警戒したしずかちゃんがお風呂に入らなくなってしまうかもしれないからです。そしてそれは、お風呂好きのしずかちゃんの死につながるかもしれないのです。
「なにも湯船のすぐ脇につけようってわけじゃないよ。遠くから慎重に狙うから、絶対に大丈夫だよ」
 スネ夫はそう言いましたが、私ははらはらしました。

更新日:2008-12-12 13:37:45

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