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誕生日 逃亡 賽 (その他)


「お誕生日、おめでとうございますっ!」
事務所に到着すると、リューキは盛大な歓声と共に出迎えられた。

「…ああ。そういえば、今日だったね?
 すっかり、忘れていたよ。…気を使って貰わなくて、良かったのに。」
少し照れくさそうに微笑んで、リューキは言った。

デスクの上には、ご丁寧にケーキまで用意されている。
しかもその上には、大きな蝋燭が5本。

この世に生を受けて、約75年。
そして、この仕事に就いてちょうど50年目のこの日。
これが今の彼の、誕生日だ。

その時また、新たな人物が事務所に姿を現した。

「私に内緒で、一体何の騒ぎなの?…楽しそうだね。」

10歳前後の少年が、少し不満そうに言った。
その瞬間、事務所内がざわめきに包まれた。

「あ、あの!決して内緒にしていた訳ではないのですよ?
 ただお忙しい貴方様の、お手を煩わせるわけには…。」

一人の女性事務員が、慌てた様子で言った。

「…ふん。どっちでもいいけどね?
 それで、何してたの?楽しそうに、歌まで歌ってさっ!」
少年は頬を膨らませ、言った。

「今日はリューキの、誕生日なんだっ!それも、50回目のっ!
 笑えるだろう? もう立派に、じじいの仲間入りだなっ!」

そう言うと、愛らしい少女が楽しそうに笑った。

「…誕生日か。それならそうと、言ってくれたら良かったのに。
 そうすれば私も、何か祝いの品を用意したのに。」

少年は、少し寂しそうに言った。

「ありがとうございます。でも、お気持ちだけで充分ですよ?」

リューキは穏やかな笑みを浮かべ、答えた。

「ところで、何か用があって来られたんじゃないんですか?
 お忙しい貴方様が、わざわざ事務所まで足を運ばれるだなんて…。」

一人の男が、聞いた。

「…ああ、そうだった。新しい、双六を手に入れたんだっ!
 リューキ、後で一緒に遊ぼうよっ!それと私の分も、ケーキはある~?」

少年は笑顔でそう言うと、さいころをポンと、宙に向かって投げた。



その日は表面上は穏やかなまま、無事に過ぎていった。
しかし翌日、事件が起きた。
…少年が、逃亡したのだ。

「…どうしよう!あの方がいなければ、間違いなく混乱を来すわっ!
 早く、見つけなければっ…!」

一人の美しい女性が、慌てた様子で言った。
それを聞いたリューキは、静かな声で答えた。

「…大丈夫だよ、ユメノ。あの方の気紛れは、いつもの事だ。
 そのうちきっと、戻ってくるさ。飽きたとか、お腹が空いたとか言いながらね?
 …でもまぁ、今回は原因がなんとなくわかるから、俺も探しに行くけど。」

更新日:2010-05-21 13:17:58

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