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時計 君 願い (恋愛)
今日は節分。
会社で『恵方巻き』を付き合いで買わされたから今年も一緒に食べようと、昨日彼から電話があった。
だから私は一人、彼の部屋で帰りを待っていた。
ガチャガチャという鍵を開ける音を聞き、私は慌てて玄関に飛び出した。
「お帰りなさいっ!」
彼はそんな私を見て、笑った。
「ただいま。なんかご主人様の帰りを待つ、犬みたいやな…。」
私は笑顔で答えた。
「ワンっ!」
彼はそんな私を見て、苦笑した。
それから彼は、手に持っていた買い物袋を私に手渡した。
時計を見ると、その針は7時半を少し過ぎた所にあった。
「今年の恵方は、西南西やって!」
彼は今年もやはり、願掛けをするつもりらしい。
…性懲りもなく。
私はその言葉を聞いて、ニヤリと笑った。
それを見た彼は、慌てた様子で言った。
「今年は絶対、邪魔すんなよっ!?最後まで無言で食べな、意味無いんやから…。」
それから二人、食卓についた。
「頂きますっ!」
彼はそう言うと、西南西の方向を向き、無言で食べ始めた。
私は昨年同様、彼に色々と話し掛けた。
しかし彼は瞳を瞑ったまま、無言で恵方巻きを食べ続けた。
関西人の彼は、節分になると『恵方巻き』という名の巻き寿司を食べる。
そしてその際、二つのルールがあるのだという。
ひとつは、その年の『恵方』と呼ばれる方向を向いて食べる事。
もうひとつは、食べている間、決して喋ってはいけないという事。
この二つのルールを守れば、願いが事がひとつ叶う…らしい。
25歳にもなって、そんな事に真剣に拘る彼の姿はとても愛おしく思えた。
だから私は、彼の耳元で囁いた。
「…大好き。」
私は彼に対して、好きだと言った事は殆どない。
それこそこれまでの回数を全て合わせても、片手に余る程だと思う。
その言葉を聞いた彼は、盛大に咳き込んだ。
それから彼は、私の事を軽く睨みつけながら言った。
「…信じられへん。このタイミングでそれ、言うか~っ!?
うわぁ、くそっ、喋ってもたやんかっ!
全く、今年の俺の願い、どないしてくれんねん…。」
だから私は、笑って答えた。
「大丈夫!私はまだ、食べてないから。
あなたの分も、ちゃんと願掛けしてあげる♪
…だから、話しかけないでね?」
そして私は、無言で恵方巻きを食べ始めた。
その間も彼はず~っと、文句を言い続けていたけど。
私が食べ終わると、彼は言った。
「…来年は絶対、君に邪魔はさせへんからな。」
私はそんな彼を見て、また笑った。
来年もまた、彼と一緒に恵方巻きを食べられたらいいなぁ、と思いながら。
…FIN
会社で『恵方巻き』を付き合いで買わされたから今年も一緒に食べようと、昨日彼から電話があった。
だから私は一人、彼の部屋で帰りを待っていた。
ガチャガチャという鍵を開ける音を聞き、私は慌てて玄関に飛び出した。
「お帰りなさいっ!」
彼はそんな私を見て、笑った。
「ただいま。なんかご主人様の帰りを待つ、犬みたいやな…。」
私は笑顔で答えた。
「ワンっ!」
彼はそんな私を見て、苦笑した。
それから彼は、手に持っていた買い物袋を私に手渡した。
時計を見ると、その針は7時半を少し過ぎた所にあった。
「今年の恵方は、西南西やって!」
彼は今年もやはり、願掛けをするつもりらしい。
…性懲りもなく。
私はその言葉を聞いて、ニヤリと笑った。
それを見た彼は、慌てた様子で言った。
「今年は絶対、邪魔すんなよっ!?最後まで無言で食べな、意味無いんやから…。」
それから二人、食卓についた。
「頂きますっ!」
彼はそう言うと、西南西の方向を向き、無言で食べ始めた。
私は昨年同様、彼に色々と話し掛けた。
しかし彼は瞳を瞑ったまま、無言で恵方巻きを食べ続けた。
関西人の彼は、節分になると『恵方巻き』という名の巻き寿司を食べる。
そしてその際、二つのルールがあるのだという。
ひとつは、その年の『恵方』と呼ばれる方向を向いて食べる事。
もうひとつは、食べている間、決して喋ってはいけないという事。
この二つのルールを守れば、願いが事がひとつ叶う…らしい。
25歳にもなって、そんな事に真剣に拘る彼の姿はとても愛おしく思えた。
だから私は、彼の耳元で囁いた。
「…大好き。」
私は彼に対して、好きだと言った事は殆どない。
それこそこれまでの回数を全て合わせても、片手に余る程だと思う。
その言葉を聞いた彼は、盛大に咳き込んだ。
それから彼は、私の事を軽く睨みつけながら言った。
「…信じられへん。このタイミングでそれ、言うか~っ!?
うわぁ、くそっ、喋ってもたやんかっ!
全く、今年の俺の願い、どないしてくれんねん…。」
だから私は、笑って答えた。
「大丈夫!私はまだ、食べてないから。
あなたの分も、ちゃんと願掛けしてあげる♪
…だから、話しかけないでね?」
そして私は、無言で恵方巻きを食べ始めた。
その間も彼はず~っと、文句を言い続けていたけど。
私が食べ終わると、彼は言った。
「…来年は絶対、君に邪魔はさせへんからな。」
私はそんな彼を見て、また笑った。
来年もまた、彼と一緒に恵方巻きを食べられたらいいなぁ、と思いながら。
…FIN
更新日:2010-02-04 11:36:05