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第三章 前触れ

挿絵 800*600

時々、ふと頭を過ぎる台詞がある。
「私達は何故、戦っているのだろうか。」
守るため?違う。俺には守るべき物など無い。
それ故に戦うのか?守るべきものを見つけるために―。


半年後。―日本(?)
1941年 12月7日 南部仏印

「なぁなぁ、知ってるか?
「ああ?何をよ?」
「あれあれ、前に就役した零戦ってやつ。」
「おう。まだここらにはロクセンしかないけどな。それがどうした?」
「どうやら、それがかなりスゴいらしいのよ。」
「へぇ。」
 こんな会話を繰り広げているのは第二戦闘攻撃隊、通称火演隊の
隊長、原田高雄と副隊長の最上健一だ。
「何でも、羽の先が指先みたいに感じるとか・・・ってなんだありゃ?」
健一が高雄の陸攻改を指さした。ある物が主翼の下部に取り付けられている。
「ありゃあダイブブレーキさ。こないだドイツから届いたんだ。」
「おいおい、急降下爆撃でもすんのか?戦攻で。」
戦攻とは、G4M1一式陸上攻撃機の改造機、
AB4M1一式陸攻改の事である。
この機体は主に爆撃機として働くが、一番に敵地に乗り込み、敵の迎撃を突破して目標に向かえるような仕様となっている。

まず、インテグラルタンクを改造し、防弾ゴムと合金版で耐久性を上げている。
また、機体剛性をアップさせて、激しい機動に耐えるようにも作られている。
武装は7.7mm機銃を全て12.7mmに換え、遠隔操作できるように改造した。また、前部及び尾部銃座の機銃は20mm機関砲に交換されている。そして、コクピット前にも20mm機関砲を2門追加した。
爆弾倉はノーマルと変わらない。800kg鉄甲爆弾か魚雷を1つ載せられる。

此処までに挙げただけでもかなりの重量増である。それに対応するため、Egを火星から先行量産型の誉にターボを組むことで対処している。
最後に、フラップの可変角をアップして戦闘行動に備える。
そして今回のダイブブレーキ追加だ。さらに激しい機動が執れるようになる。

高雄は、黒く輝く機体を見ながら言う。
「いや、それもあるが、主な使用は急降下機動からの素早い立て直しかな。」
「そうか。ってかお前のやつにしか着けないのか?」
「そうだ。高かったんだぞ」
「・・・・・まさか、自腹??」
「そのまさかだ。しかし、こいつがまた一層美しくなったぞ。・・・おっ」
ダイブブレーキの取り付けが終わったようだ。
「よーしお疲れ~・・・って・・・お前らぁ!何積んでんだ!?」
黒い箱のような物が整備兵の手で次々と機内に運び込まれている。

「すいません中尉殿!私たちも分らないのであります!!でも、上からの命令で!」
「・・・あっ、そう。何かも全く分らんのか?」
「そうであります!あ、あと板橋中佐が中尉殿を呼んでおられました!」
「・・・それを早く言わんかい・・・」
「今回もキツイ任務だろうな。ご苦労さん。」
健一が声をかける。
「ん。だろうな・・・まぁしょうがない、行ってくるわ。」
高雄は手を振って健一と別れ、司令室に向かった。

更新日:2009-12-23 20:59:37

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