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小説

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第一話 接触

その日私はいつものように、仲の良い女友達2人と一緒に、満員電車に乗って下校中だった。
素直じゃないけれど、本当はとっても可愛い女の子達。
私はこの子達の事が、大好きだ。

私は自分が普通の人間でないが故、基本的には他人の事が信じられない。
そう。私が、ある能力を持つために…。

私は物心ついた時から、他人の心の声を聞く事が出来た。
とはいえそれは、心の鍵をきちんと閉じさえすれば、拒否する事も出来る。
そして同じ能力を持った人間に、心の声を聞かれない様にする事も…。

だから私は、なんとか『普通の女の子』として生活が出来ているんだろうと思う。

この日私は、とっても疲れていて。
いつもは閉じている心の鍵を、開け放したままにしていた。

「ルナのそのピアス、可愛いねぇ♪」
『…まぁでも、可愛いのはその、ピアスだけなんだけどさ。』

全くもう、雪菜ったら。
そんな意地悪な事を考えながら、本当は彼女の事、大好きな癖に。

「ありがとうっ!実は、彼氏から貰ったのぉ♪」
『あの男、好みじゃないけど、プレゼントのセンスだけはいいのよね…。』

ルナもそんな事言いながら、彼氏から電話がないって泣いてたの、誰だっけ?
…ホント、素直じゃないんだから。

表面的な会話と、心の声。
時々ではあるけれど、私の頭には、更に深いところにある心の声が感じられる事がある。
人間には表と裏、そして自分ですら知らない、深層心理というものが存在しているから…。

そんな事を考えていたら、別の男の子の心の声が聞こえてきた。

『…くだらないな。
 それに言ってる事と考えてる事、全然違うじゃん!
 あぁ、気分悪っ!…くそっ、吐き気がする。
 なんか最近、人の心の声が聞こえる音量が、大きくなってきてないかっ!?
 …このままじゃ俺、そのうち気が狂うかも知れないな。』

…私と同じ能力を持った人間が、電車に乗ってる?

初めての経験にちょっとワクワクして、私は思い切って心の中で話し掛けてみた。

「ホント、いいよねぇ。ルナの彼氏、優しくて!」

『確かにあなたの言う通り、くだらない会話だけどね。
 でもねぇ、そんなに他人の心の声が聞きたくないなら、聞かなきゃいいじゃない?
 全く、被害者ぶるんじゃないわよ。乙女の会話を、盗み聞きしておいてっ!』

誰かが背後で、振り返る気配を感じる。

やっぱり、聞こえてるんだっ!!!

身内以外でそんな人間に逢った事が無かった私は、相手がどんな人物なのか、とても気になってしまった。

「私も、彼氏ほし~い!」

『勿論そんなの、嘘だけどね?
 そんな馬鹿男、願い下げだわ!』

わざと本音とは、少し違う心の声を彼に向けてぶつけてみる。
ルナ、ごめんねっ!
心の奥底で、彼女に謝りながら。

振り向いた視線の先にいたのは、茶色い、ふわふわと柔らかそうな髪をした、背の高い高校生だった。
鼻はスッと高く、唇は少し薄い。
肌は、そんじょそこらの女子高生が尻尾を巻いて逃げだすんじゃないかという程白くて、透明感があった。
そして何より私が目を奪われたのは、彼の瞳だった。
大きくて美しい茶色のビー玉みたいな瞳は、長い睫毛によって、見事なまでに縁どられていた。

…綺麗な、男の子。

それが彼を見た、第一印象だった。

『…聞こえるのか?』

彼が私に向けて、心の声を発した。

『…ええ、聞こえるわ。
 まさかこの能力を持つのが、世界に自分だけだとでも思ってたの?』

そして唖然とする彼を尻目に、私はにっこりと微笑んだ。
本当は心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしていたのだけれど、表面上は平静を装って…。

更新日:2010-07-13 13:09:12