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しかし俺が再び心の中で声を掛けようとしたその瞬間、少女はまた女友達の方へと向き直し、彼女達との会話を再開させた。

それでも俺は、どうしても彼女と話がしたくて、心の中で尋ねた。

『君は以前にも、同じ能力を持つ人間と、会ったことがあるの?』

しかし、彼女からの返事はない。
そこで俺は、彼女の言葉を心の中で思い返して愕然とした。

『そんなに他人の心の声が聞きたくないなら、聞かなきゃいいじゃない?』

彼女はあの時、確かにそう言ったのだ。
…という事は、俺の心の声を、わざと聞かないようにしているっていう事なのかっ!?

彼女の話を、詳しく聞きたい。
…否、聞かなくてはいけない。
俺の本能が、そう告げた。

ちょうどそこで、電車が停車した。
唖然としている彼女を尻目に、俺は迷わず少女の腕を掴み、そのまま二人で駅に降りた。

「ちょっ、ちょっと、ゆららっ!?」
「おい、久遠っ!お前、何やってんだよっ!?」

それぞれの友人が何か必死で言っているのが、閉じていくドアの隙間から見えたけれど、そんな事もうどうでもよかった。

彼女を見ると、相変わらずかなり吃驚した様子で固まっていたのだけれど。
…次の瞬間、プッと吹き出したかと思うと、彼女は腹を抱えて大笑いし始めた。

今度は俺の方が驚き、呆然と彼女を見詰める。
暫くすると、漸く笑いが治まったらしい少女は、にっこりと微笑んで言ったんだ。

「…後で皆にする言い訳、考えないとね?」

更新日:2010-07-13 13:08:36

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