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俺はその小さな包みのリボンをそっと外すと、紙袋の口を開けた。
中には、とても小さな、南京錠の様なものがついたネックレスが入っていた。

「これは、私が小さい頃におじいちゃんから貰った物なんだけど…。
 これを使うと、心の鍵を開閉する時にイメージしやすいから、と言ってくれたものなの。
 使い古したもので悪いんだけど、よかったら使ってみて?」
彼女は小さな声で、言った。

「ありがとう。」
俺が心からそう言うと、彼女は少し恥ずかしそうに笑った。

「鍵の開閉の仕方は、分かるよね?試しに一度、開けてみて?」

言われたとおり、鍵穴に刺さった小さな鍵を回転させると、錠の口が開いた。
その瞬間、俺と彼女の心が解放されたのを感じた。

『でも、こんな使い古した物、彼にあげてよかったのかしら?
 いくら私の宝物だからって、彼が喜んでくれるとは限らないし…。』

彼女の宝物、って…。
そんな大切なもの、俺が貰って大丈夫なのかっ!?
更にゆららの、心の声は続く。

『でもこれはきっと、彼の役に立つだろうし…。
 それに、彼に持っていて貰えたら、私も嬉しいし…。』

「ゆらら…。君の大切な宝物、本当に貰っちゃっていいの?」
俺が聞くと、彼女は驚いた様にこちらを見た。

『やだっ、私ったらっ!
 いつもの癖で、鍵が開くところを見ただけで、心を解放しちゃってたのっ!?』

俺の心の声は彼女に届かなかったのか、ゆららは自分の心の鍵が解放されていた事に全く気付いていなかった様だ。
でも次の瞬間には、また鍵を閉じてしまったのか、それ以上彼女の心の声が聞こえてくる事はなかった。

「ありがとうっ!マジで、すっげえ嬉しいっ!
 絶対、大切にするからっ!」
俺がそう言うと、彼女は恥ずかしそうに、でもとても嬉しそうに笑ってくれた。

「いいえ、どう致しまして。
 …でも本当に、新品じゃなくてごめんね?」

ゆららは、申し訳なさそうにそう言ったんだけれど。
新品なんかより、こっちの方がよっぽど嬉しい!
俺はこの時、心からそう思ったんだ。



更新日:2010-07-13 13:22:19

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