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小説

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第八話 宝物


『ピンポーン!』

チャイムが鳴り、ドアを開けると、そこには逢いたくて堪らなかったゆららが立っていた。
時間は彼女がメールでくれた通り、4時を少しまわっていた。

「ごめんね、また呼びだしちゃって…。
 どうぞ、上がって?」
俺は微笑んで、彼女に言った。

「お邪魔します!」
ぺこりとお辞儀をして、彼女は俺の家へと足を踏み入れた。

俺は内心かなりドキドキしていたのだけれど、平静を装い、わざとふざけて言った。
「今日は一体、何を教えてくれるの、ゆらら先生?」

「…先生って。なんか、すっごい恥ずかしいんだけど。」

俺は、彼女の様子が余りにも可愛くて、思わずクスクス笑ってしまった。
「だって、先生じゃん。…ゆらら、顔真っ赤!」



昨日と同じ様に、俺の部屋に彼女を案内する。
それから俺は、ジュースを入れるためキッチンへ向かった。

よし、大丈夫っ!
心の鍵はしっかり閉まっているから、俺の気持ちが彼女に伝わることはないだろう。
でもその代わり、彼女の心の声が俺に届く事もないんだけど…。

冷蔵庫からジュースを取り出し、コップに注ぐ。
それから俺は、再び自分の部屋に戻った。

『コンコン!』

ドアを開ける前にきちんとノックしたのだけれど、聞こえていなかったのか、彼女は何だか慌てた様子でこちらを振り返った。
…俺、部屋に変な本とか、置いてなかったよな。

「どうしたの?ゆらら。」
俺は平静を装い、聞いた。

するとゆららは、彼女の鞄の方をちらりと見た。
…何か中に、気になる物でも入っているのか?

「…別に、何もないわ。」
彼女は無表情に、そう答えた。

…怪しい。

でもそれ以上は追及せず、暫くは他愛のない会話を二人で楽しんだ。
それからゆららが、本題を切りだした。

「ところで、今日、私が教えたいことなんだけど。」

そこで俺は漸く、危うく勘違いしそうになっていた事に気付いた。

…そうだ。
彼女は俺に、能力をコントロールする方法を教えてくれる為だけに、うちに来てくれてるんだ。

俺は少し切ない気持ちに支配されそうになったけれど、何事も無かったかの様に振る舞った。

俺が特に返事を出来ないでいると、彼女は鞄に手を伸ばした。
鞄の蓋を開け、彼女は何か、ピンクの小さな紙袋を取り出した。
それにはきちんと、可愛らしい赤のリボンまで掛けられている。

「これ、私がずっと使っていた物で、悪いんだけど…。
 これがあると、かなり心の鍵の開閉が、楽になると思うの。
 …だから、久遠が使って?」

そう言うと、彼女はその包みを俺に手渡した。

更新日:2010-07-13 13:21:47