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 次に中層部“セクシオンC”ですが、ここはかなりややこしく、実際に街の中に入ってみないとどこがどうなっているのか、外からではさっぱりです。
 道路や鉄道などはポリスコアのパイプにからみつくように複雑に交錯しているし、建ち並ぶビル群がやたら邪魔で、おまけに樹木などもたくさん植えられているので、外からほとんど見えないのです。
 ここはホテルやデパート、公園やスタジアム、そして大学や高級マンションなどが中心で、一般の民家はほとんどありませんが、それぞれの都市機能を分割配置して、より機能的にした結果こうなったのでした。
 最後にポリスコアの最下層とその周辺。ここは“セクシオンT”と呼ばれ、直接地面に接した部分なので面積は一番広いですから、ポリスコアからはみ出してずっとセーヌ湾岸や南の丘陵地まで広がっています。
 ここにもビルはたくさんありますが、やはり住宅中心で、古くからの街並やその他、広大な土地を必要とする学校や工場なども目立ちます。
 上に比べると割合のんびりとしていて、いわゆる“下町情緒”がいたる所に存在しているのです。
 このように、極めて立体的な構造と交錯を有するこの都ですが、それは高度に発達した現代科学技術と、この西ヨーロッパの地に集まってきたあらゆる民族たちの知恵との結晶であると言えるでしょう。
 しかし、この街はそのような華やかさのみが存在しているわけではありません。人が集まると、そこには必ずいくつもの問題が発生するのです。支配、欲望、孤独、虚栄、貧困、堕落、そして犯罪。この都市は、そんな人類社会の避けて通れぬ現実の集積物でもあるのでした。
 わたしがエマトリアーヌの都に着いたのは、太陽が西にかなり傾いた夕方でした。貨物列車は途中何度も信号待ちや荷物の積みおろしなどで停車して、結局ここまで半日以上もかかったのです。
 “モンド南六番駅”と呼ばれるその駅は、まるっきりの貨車専用の駅でした。駅舎は大きなドーム状になっていて、その中でいくつも線路が分岐しています。その間のホームではたくさんの労働者たちがリフトロボットに乗って、荷物の積みおろしや検査をしていてとても忙しそうです。
 ジャッキーはわたしを連れて列車がホームへ入る直前に飛び降りたので、トラックの乗り入れ口から誰にも見つからずに外へ出ることができました。

更新日:2009-09-28 22:03:01

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超時空物語RAIN 第一部 わたしの仲間たち