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小説

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森の都

 ルーブラ市――別名“森の都”で知られるこの街に朝がやってきました。
 今日は見渡す限りの快晴。すっかり春めいてきた高原の空に、飛ぶ鳥たちのさえずりも心なしか喜びに満ちた歌声のようにさえ感じられます。
 さて、“森の都”と呼ばれるからには森がなければなりません。街のそばに大きな森があるのか。それともまるで森の様にビル群が建ち並んでいるのか。
 いえ、実は森の中に街があるのです。ここで少し、わたしのこの生まれ故郷のことについてお話しすることにしましょう。
 ルーブラ市は、ローヌアルプ州レマン湖南西岸に位置する小都市です。レマン湖を一望できる南西の丘から街を望むと、まず、なだらかな丘に青々と茂った広大な森林のほぼ中心に、周囲の木々からひょっこり頭を出した三つの建物が見えます。
 中心にある一番高い時計塔の載った建物がルーブラ駅。旧世界十八世紀初期のヨーロッパに見られる建築様式を模して約六十年前に建てられたもので、実際はアンテナ塔として利用されている時計塔は、この街のシンボルなのです。
 次に、すぐその隣に、やや駅に遠慮がちに建っている近代的なビルは、ルーブラ市役所です。当時建て替えられたばかりの十六階建てのビルで、街全体の景観に配慮して、その形はちょうどクリスマスツリーのような二等辺三角形になっています。
 そして少し離れた東側にずんぐりと建っているのは、ルーブラ市立図書館です。六階建てで、形は普通の長方形のビルですが、時空爆流以後の歴史を記した書物がどっさり収蔵されているので、一年間でここを訪れる歴史研究者ののべ人数は、街の人口の半数にも及ぶと聞いています。
 でも外からはこの三つの建物以外、道路や民家はほとんど見えません。すべて森の背の高い木々の中に隠れているからなのです。
 この一帯は時空爆流の影響が比較的少なかったせいか、旧世界からの豊かな自然をそのまま現代にまで受け継いでいましたから、その後ここへ移り住んできた人々は少しでもこの自然を残そうと、森を切り開く面積を最小限に抑えてこのような景観が生まれたのです。ルーブラ市はまさに人と自然とが共存してきた街なのです。

更新日:2009-09-28 21:33:32

超時空物語RAIN 第一部 わたしの仲間たち