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「黙れ。」
 調子良くしゃべっていると、突然ジャッキーがさえぎりました。怖い顔をしてわたしをにらんで、ものすごい威嚇のこもった眼でした。わたしはすっかり怯えて、もうしゃべろうと思っても声が出ませんでした。
 仕方なくそのまま下を向いてじっと黙っていると、わたしのすぐ足元に何やらキラキラと光る小さな紫色の石が見つかりました。
『何だろ…』
 暗いので、わたしはそれをそっと拾い上げてよく観察してみました。形はいびつですが、大きさはクルミと同じくらい。やや赤に近い、透き通るような紫色の中に、金色に光る粒子がたくさん混じっていて、とてもきれいです。握ってみると少し暖かいので、わたしはすぐにピンときました。
『時空物質の結晶だわ…!』
 なんと、それは時空物質でした。それも透明度や中の粒子“時空体”の密度、そしてこの独特の色合いからいって、高級時空物質“イプシロン”に間違いありません。普段見馴れてるアルファやベータに比べると、とても同じ時空物質とは思えない美しさです。わたしもこうして実際に手に取って見るのは初めてでした。
『どうしてこんな所にイプシロンが? さっきまで気がつかなかったってことは、もしかしたらシーフキラーの部品だったのかしら…。』
 わたしは首をかしげながらジャッキーの方を見ました。彼はタバコを吸いながら目を閉じていて、こちらには全然無関心です。
 イプシロンはいざとなればお金の代わりにもなる貴重品なので、わたしはすぐにそれをスカートのポケットにしまい、こっそり持っていることにしました。

更新日:2009-09-28 04:34:47

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超時空物語RAIN 第一部 わたしの仲間たち