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小説

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序章 あの一年間

 この物語は、わたしと、わたしの大切な仲間たちの、楽しくて、不思議で、そしてちょっぴり悲しい記憶のすべてです。
 わたしの名前はレイン=パスプローナ。わたしは、これからわたしがお話しするこの出来事が始まる前までは、本当に、世の中のあらゆる現象やそれを包み込んでいる壮大な宇宙のことなど、何一つ知らない女の子でした。
 ましてや、自分自身の存在についてなど真剣に考えたこともなく、母親や友達、学校の先生に職場の先輩たち、それからわたしが今まで関わってきたたくさんの人たちの中で、まるでそれが当たり前のことのようにすべてを受入れ、感じたままに処理してきたに過ぎません。
 だからと言って、わたしが素直で正直で、他人の誰が見ても“いい子”だったと思ってはいません。わたしはまずとてもおしゃべりで、学生の頃はよく先生から「あなたはもう少し静かにしていられないのですか」とか、「あなたは他人の話を聞こうとしませんね」などとお叱りを受けてばかりいましたし、あわてんぼうのおっちょこちょいで、とんでもない失敗を繰り返しては、様々な人に迷惑をかけたりしていました。
 わたしは今現在、毎日の生活において他の人たちと違っていることは一つもありません。ごく普通に、大多数の人々と同じ日々をおくっている一人の女性です。
 でも、あの一年間…わたしが十九歳から二十歳の頃に経験した出来事は、わたしのそれまでの価値観や人生観を大きく変えるものでした。事実、今のわたしは、以前のわたしを知っている人から見れば、まるで別人のようになったとよく言われます。
 わたし自身としては、相変わらずおしゃべりであわてんぼうで、別にそれほど変わったと認識してはいませんが、物事の考え方においては確かに随分と変わったと思いますし、そうなってしまったのも当然だと思います。
 本当に、世間の人々誰もがおっしゃるように、あの一年間で世界は大きく動きました。きっとわたしのように、「別人のようだ」なんて言われる方も多いことでしょう。
 ただ、わたしの中でとらえた“あの一年間”は、おそらく他の皆さんの経験したそれとは、少し異質で特別なものなのです。もしそうでなかったなら、わたしはこうしてこれらの出来事を他の皆さんに伝えようなどという、以前のわたしからは考えられない行動をとりはしなかったに違いありません。
 わたしがこの物語をお話しする理由は、「あの一年というものは一体何であったのか」などと難しい評論をするためではありませんし、また、自分の考えを押しつけようとするつもりもありません。わたしが見たこと、感じたこと、すべての経験をそのまま、一人でも多くの方に伝えたいと考えたからです。
 ただ、もう世の中はすっかり変わってしまったのに、今更何を伝えればいいのかと、わたしには迷いもありました。
 確かにあの一年間の出来事がわたしたち人類にもたらした影響がいかに大きく、世界の情勢がすっかり変わってしまったのは事実かも知れません。しかし、それですべてが自動的に変えられていくわけではないのです。なぜなら、本当の意味で世の中を変えていくのは、わたしたち自身なのですから。             
                    時空暦1015年5月 レイン=パスプローナ

更新日:2009-09-28 02:22:16

超時空物語RAIN 第一部 わたしの仲間たち