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小説

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仮面

 午後一時になり、一日のうちで最も暑い時間帯が、訪れた。
 正雄は、風通しの良い窓の下に長椅子を置いて横になり、顔の上にファイルを置き、昼寝の準備をした。昼寝は彼の日課だ。
 すると、誰かが近づいてくる気配がする。しかし彼は動かずに、寝たふりを続けた。正体不明の人物は、正雄の隣りまで来て立っている。
 突然、彼の額に、冷たいものが落ちてきた。彼が飛び起きると、その人物は小さな悲鳴を上げて、後ろに一歩下がり、笑っている。
ランだ。

「あー、驚いた。起きてたの」

「驚いたのは俺のほうさ。何か冷たいものが落ちてきたぞ」

 正雄がランを良く見ると、彼女の髪は濡れてる。

「なんだ水浴びをしてきたのか」

「そうよ。いつもお昼ご飯の後は暑いから、水浴びするでしょ」

「いいなー。毎日午後は水浴びか。事務所では出来ないからな」

「あのねマサ、今日からカンボジア語を勉強するんでしょ。約束を忘れたの?お昼寝なんかしてちゃだめよ」

そう言いながら、彼女が長い髪を両手で絞ると、数適の水が落ちた。

「さっきの、わざとやったなー」

 彼女は微笑み、肩から下げている布制のカバンから一冊の本を取り出して、正雄の横に座った。

ちょうどその時、幸子が部屋に入ってきた。

「ラン、今日は早いわね。昼休みは二時までよ」

「やだ、サッチャンも忘れてるの?今日からこの時間に、カンボジア語を教えてあげるって、先週末に約束したじゃない」

「ああ、そうだったわね。ちょっと待っててね」

更新日:2011-08-07 11:23:18