• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 64 / 228 ページ

初体験

「サッチャーン、出発するよー。準備はできた?」

「今、行きまーす」

蓮根に呼ばれて、幸子は急いで事務所を出た。その日の朝は蓮根の運転で二人はサイトシックスへ食事を届けに行くところだった。
すでに調理された食事が、高さが一メートル以上ある円筒形のポリ容器に入り、それらが荷台にぎっしりと積まれている。幸子はその数を確認してから、四輪駆動に乗り込んだ。

常夏の国タイでのドライブでも、窓を全開にして走れば早朝の風は涼しく感じられた。窓から入る風で、彼女の髪は大きく後ろになびいている。

 その日も、蓮根はいつものように、時速約八十キロで快適に車を走らせている。 舗装されていない広くはない道だが、対向車も無く危険は感じられない。
 見慣れた風景が次々と過ぎ去って行く。道は林の中に続き、やがて一つの村を通り過ぎると、広大な田園風景が現れた。
 道はここから真っ直ぐに伸びて、遥か彼方の次の林まで見えている。田畑に盛り土をして作られているこの道は、両側の地面よりも、2メートルほど高く、左右の見晴らしも良い。ここで蓮根はいつものように、スピードをさらに上げた。
 前方の両側の水田に水牛の群れが見えてきた。道路の斜面の草をはむものや、泥の混じった水溜まりで、泥浴びをするものもいる。

「コボチャン、私たちここに来て、まだ半年しか経ってないでしょ」

「正確には、五ヶ月と十六日目だよ」

「でも、もっと長く居るような気がするんです。この回りの風景も、あの水牛の群れも、いつの間にか、当たり前になっているじゃないですか。不思議ですよね」

蓮根は、回りを見渡しました。

更新日:2011-08-06 17:24:43