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「こにちは。ソムサックです」

ひどいタイ語訛りの日本語だったが、すでにこのような発音を聞きなれている二人には理解のできるものだった。

「こんにちは。始めまして。迎えにきてくれたんですか。ありがとうございます。私、茂木幸子です。よろしくお願いします」

「こんにちは。ありがとうございます。私は蓮根です。ソムサックさんの名前はバンコク事務所で聞いてました。バスを降りてから、宿舎まで行くのが心配だったので、助かりました」

「日本語、ゆっくり話してください。英語なら大丈夫」

「もう一度、今度は英語で言いましょうか?」蓮根は日本語で言った。

「大丈夫。大丈夫。今のは分かった。 ああ、これ、幸子さん、あなたの荷物ですか。大きいですね」

ソムサックは笑いながら幸子の荷物を持ち、彼らを先導して歩きだした。

バスが止まった通りは町のメイン通りらしく、いくつもの店が並んでいる。
日本では考えられないような色鮮やかな服を軒に吊るしたり、棚の上に無造作に山のように衣料を積み上げている店もある。
中国語の看板を出し、いったい何を商売にしているのかわからない、雑多な商品が並ぶ店。なぜか野菜や肉を軒に吊るし、その下で料理をしている食堂。
広く開けられたままの入り口の中には事務机の上に電話が一つだけあり、その他には何も無い不思議な事務所もあった。

彼らはこの通りを数分歩き、右に曲り、そこから三軒目の垣根を入った

更新日:2011-08-06 10:34:00

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