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過去の夜

 蓮根は更に不機嫌そうな口調になり、目を通りに移しながら水割を呑んだ。次の瞬間、彼の顔には明らかに驚きの表情が現れ、体が痙攣でもするかのように中腰になった。

「どうしたのコボチャン?」と正雄。

「あ、いや、あの、ちょっと知り合いに似た人がいたので・・・でも人違いでした」彼は通りの人ごみを見ながら言った。

 正雄と金川が振り向くと、鈴木が一人の女性を連れて歩いて来る。
その女性は髪を腰まで伸ばしていた。面長の顔に目がくっきりとして美しい。ゆったりと着られたティーシャツの首もとからは鎖骨が良く見えている。また腕の細さも、彼女の体型を良く表現している。

「やあ、皆さん、こんにちは。楽しそうに飲んでますね」

「こんにちはタクさん。そちらの女性はどなた。新しく来た人?」と正雄が質問した。

「ええ、そうです。紹介しましょう、野田恵美子さんです。 昨日、アランに着いたばかりなので、町を案内しているんです」

「はじめまして、キムです」

「上田正雄です。通称マサです。よろしく。良かったらちょっと座っていきませんか」

「僕は蓮根雅一です。皆はコボチャンと呼んでいます。僕は、あまり好きなあだ名ではないんですけどね」

「はじめまして。野田恵美子です。よろしくお願いします」

更新日:2011-08-09 11:13:20

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