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小説

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避難民

 あまり顔つきの似ていない姉妹のリンとランは、タイ国境に近いバターンボンで、友人のソックンと三人で一緒に住んでた。
 長い内戦が続いていたので、両親やその他の家族とは音信不通だ。すでに死んでしまったのか、それともタイへ逃れられたのか、それとも、ただ居場所がわからないだけなのか、彼女達には、それを判断する情報など、まったく入手できなかった。

ある日の夜、ソックンから、タイへの脱出を相談された。カンボジアの多くの人々が願っている、簡単な事ではない。
政府関係者に知られると、投獄される。タイとカンボジアの国境には、深いジャングルと険しい山岳地帯もある。それを越えられるだけの食料を、備蓄しならないが、食糧難の時代なので、簡単ではない。 また、いくつもある武装勢力に出会ってしまう事もある。その場合に、命乞いに使う金や宝石なども必要となる。戦闘に巻き込まれたり、地雷地帯に迷い込んだり、危険はとてもたくさんあった。その危険を少しでも少なくする為に、ある程度の集団を作る必要もある。そのメンバー集めから、すでに大変な仕事だった。これらを考えると、リンはすぐに返事ができなかった。妹のランを心配したのだ。

翌日、ソックンは、一人の男性を連れてきた。彼の名はソン。彼はかつての富豪の息子で、幼い時からフランスの全寮制の学校に留学をしていた。大量虐殺をしたポルポト政権が倒れ、カンボジアに現在の政府が誕生した時に、ソンは、祖国を復興させるために働きたいと願い、帰国した。しかし、カンボジアの現実は、まだ内戦が続いていたのだ。さらにベトナムによる支援ではなく、事実上の占領であった。 肉体労働の仕事にしかつけなかったソンは、その夢を砕かれ、再び祖国を離れる決心をしていた。
ソンが自分の紹介を終わると、ソックンがリンに言った。

更新日:2011-08-12 10:10:04