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小説

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Ⅲ 巨神ダイダラム

 榛名山は海抜一三九〇メートルのカルデラ火山だ。カルデラというのは富士山タイプの成層火山が陥没してできるもので、その際、外側にできるのが外輪山、へこんだところに水が溜まってできるのがカルデラ湖、外輪山の内側にできた新しい火山が火口丘という。だから榛名山におけるカルデラ湖が榛名湖で、火口丘が榛名富士ということになる。
 僕たちが、〈二人〉を追いかけてベランダに出ようとすると、榛名富士が、ごごご……、とうなりだした。そして湖が怪しく光り出したのだった
(くっ、あやつら、ダイダラムの封印を破ったか──)
 〈兎〉ギルが確かにそうつぶやいた。沙羅が僕に、
(ダイダラムって何?)
 ときいた。知るかよ。その質問を、おじいさんが言葉を足してギルたちにきいた。
「ダイダラム──、もしかして巨神族ダイダラボッチのことかね? 大昔、人類が創世される前までは、巨神族がいて世界に君臨していたという。富士山や赤城山、それに榛名山をつくったのも巨神ダイダラボッチの一族だという伝説がある。ギリシャ神話のタイタン族や北欧神話のトロール族の日本版じゃ。言葉の響きまで似ておるじゃろが……」
 〈隻眼の兎〉ギルは、
「何でも知っているのだな、ご老人……。多くを知っているということは好奇心が強いということだ。強すぎる好奇心は思わぬ敵をつくり不幸を呼び込むことでもある」
 と忠告した。おじいさんは、
「気にくわなかったかね。なら謝るよ」    
 といいかけたところで、
ざばーっ、と激しく榛名湖の水面に、何か巨大なものが立ち上がり、そのシルエットが月に浮かび上がった。
「おおっ、ダイダラム!」
 そいつは湖畔を横切って観光船の船着き場あたりに上陸した。もちろんあたりの船やら土産物売り場はめちゃくちゃに壊されているだろう。そいつはさらに、外輪山の峠を越えて、榛名神社のほうへとむかっていった。ギルは眼帯の紐を縛りなおしてエンにいった。
「奴らは、第二の封印も破ったようだな、ダイダラムはメイスを取りにいく気だ。同志エンキドウ、奴を追うぞ」
 沙羅が、(メイスって何?)と僕にきいた。メイスというのは石や金属でできた棒状の武器の武器のことで、孫悟空の如意棒のようなものだ。
 エンはギルの言葉にうなづいてサーベルを引き抜き、宙に8の字の放物線を描いて例の黒い穴をつくった。ギルが飛び込み、後をエンが追った。
 僕と沙羅は黒い穴に駆け寄って〈二人〉名前を呼んだ。黒い穴が閉じようとするとき、びゅーっ、と掃除機が物を吸い込むような風が起こって、僕たちは穴に吸い込まれていった。穴の口からおじいさんの呼ぶ声がしたのだけれどもすぐに聞こえなくなった。

更新日:2009-06-28 14:41:37