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選ばれし者?

 ドアを開けると、奇妙な人物が立っていた。
 ここは新興住宅街のはずれにある安アパート。俺はその住人だった。
 グレイの肌に大きな目。テレビでよく見る典型的な宇宙人だった。

 そいつは遠慮なく部屋に入ってくると、しばらく部屋の中を見回した後、驚いている俺に向かってこう言った。

 「もう分っていると思うが、私は宇宙人だ。君は地球の代表に選ばれたのだ。私と一緒に来てもらいたい」

 突拍子もない話だが、聞いてみると、それ程悪い事でもなかった。
 文化の遅れている地球の人々を目覚めさせるために、3年間彼らの星に留学し、地球と彼らを結ぶパイプ役になれというのである。
 無論、富と名声は思いのままだ。

 とはいえ、普段ならいくらなんでも「考えさせてくれ」というところである。
 だが、この日の俺は違っていた。

 昨夜、同窓会があったからである。

 高校時代の友人達は皆、それぞれの道を意気揚々と歩んでいた。
 夢破れて、その日暮らしのフリーターをしているのは俺だけだったのだ。

 その上、当時のガールフレンド・久美子がすでに結婚をしていた。
 あろうことか……その頃の俺のライバル尾崎とである。

 そんな訳で、俺はいとも簡単に宇宙人の話に乗ることにした。

更新日:2009-06-12 15:47:13

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