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小説

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男の職場

ある盆明けの早朝、県南の造船所へ巡回健診に出かけたときのこと。

巡回バスが到着した場所のすぐ目の前には今まで見たことのないようなクレーンが数本そびえ立ち、厚い木綿のネズミ色をまとい黄色のヘルメットをかぶった労働者が朝から慌ただしく目の前を通り過ぎている。

健診会場は柔道場を縦に3面ほど作れる広さの土間のような食堂。その片側にはロッカーとスノコ、反対側は海の家を思わせるように寝ゴザと枕がいくつも並べられていて、上にはアルミ製の灰皿やマンガが乱雑に置かれている。

20代から60代の無骨で口数の少ない労働者の健診は滞りなく進み、午前の健診が終了するころ、正午を知らせる大きなサイレンが鳴り昼休憩を教える。

我々健診スタッフは巡回バスの中で食事をするのが常であるが、缶コーヒーを買いに外に出てみると、真っ青な晴天にもかかわらず意外に涼しく心地よい。蝉の音を聞きながら大クレーンの前の日陰ベンチに腰を下ろし潮風にあたって心身を休める。

ボーッとしているのもつかの間、就業再開10分前に高校野球の試合開始のようなサイレンが轟き、ボクシング映画「ロッキー」の主題音楽が鳴り響く食堂で紫煙をくゆらせていた労働者たちは徐に火を消し持ち場に戻っていく。

飾りっ気全くなしの、まさに男の職場。安全に、そして健やかに今後も就業してもらいたいものだと心から思う。



2009年8月

更新日:2016-12-15 15:37:02