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小説

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科学者と政治家

衆院選の行方が気になる政府自民党にとって麻生内閣の支持率低下の一因となった今年2月の盟友中川財務大臣辞任の報道は記憶に新しい。

日本国を代表する大臣たるもの、自身の体調管理不可にして職責遂行ならず、朦朧発言が世界から顰蹙を買ったのも無理はない。

氏の会見前の挙措は存じ上げぬし擁護する気もサラサラないが、新聞報道中とある記事に我医師なればこそ看過できぬ内容あり筆を取るに至った次第。

日経新聞2月17日2面、「低迷政権さらに痛撃」なる見出しで、「風邪薬を飲み過ぎてああいう症状になった人は見たことがないが、お酒を飲んでああなった人はたくさん見たことがある・・・」と医師免許を持つ野党議員発言が掲載されていた。

この記事には2つの重大な問題点がある。

一つは、医師なる当議員の発言内容はあくまでレトリックであって、それもかなり悪意ある修辞と思える点である。簡略に言えば「おいおい、同じ医者としてそこまで言いきるかよ?」という単純な疑問である。

一般臨床に携わる医師ならば、鼻汁分泌抑制目的で抗ヒスタミン剤が配合される風邪薬の多いこと、眠気誘発の副作用の存在は医家の間では周知の事実。

旧帝大卒の当議員による仮にも副作用知らずの発言ならば、市民はこの医師より診察受けぬが至当。

抗ヒ剤服用後の眠気症状を実際に見たことがなくとも可能性を否定できぬわけであるから、医学なる科学を専攻する専門家の発言としてはかなりブラックである。

口吻巧みな職業政治家であっても、発言は医師なればこそ節度ある規矩準縄に努め、政局を以て陥穽に落としめるは慎むべきと心得る。

二つめの問題点は大量飲酒未確認時点での新聞社の対応。この発言をレトリックと知りつつの掲載は興味本位で煽動的な話題提供、知らずの掲載は内服過剰症状を未精査ゆえの軽挙妄動と取られても仕方ない。

飲酒過多の真実はどうあれ、科学者の仮面をつけた政治家と話題演出に暇がないマスコミには胡散臭さを感じる。


~日本医事新報 2009年緑陰随筆より

更新日:2016-12-18 21:12:52