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愛の心

「私は愛だよ」
神崎愛から送られたメール。
それは神崎幸子五十歳宛。

本当は愛は今は神崎という名ではない。けど、良いのだ。愛は幸子の養女で、今も家族なのだから。

季節は変わったのだと感じさせる雪。そういえば、彼女と出会ったのもこんな日だった。


もう13年は経っただろうか?
彼女は、実の親から養女として引き取った。
その時彼女は泣かなかった。

幸子の夫は他界。子供も授からなかった。大学出のちょっとした秀才だったから給料は自分含め3人は食べて行ける
幸子は子供が欲しかった。

引き取る期間は、高校卒業まで。
私は遠縁の親戚が反抗期に巻き込まれたくないという理由で良い娘育成のボランティアのようで悲しかったが、愛は……彼女は今どれだけつらいだろうかと思ったら、迎え入れるのは当たり前だとさえ思えた。

夜になり、雪が降ると、彼女は外に出て空を見上げた。
その頬には、一滴の液体が流れた。それが溶けた雪か、涙かはわからなかった。
彼女は、おそらく両親も見上げただろう雪を見ていたかったのだ。


メール越しに愛の溜め息が季節の狭間に煙る。ハズ
愛は数えで二十になったところか…。

更新日:2009-04-13 13:11:04

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